旅先恋愛~一夜の秘め事~
「先方が見合いと認識していないなら、おば様には失礼だけど会うのを避けたら?」


私の提案にハトコは不機嫌そうに返答する。


「母がそう簡単にあきらめると思う? 私の首に縄をつけてでも引き合わせようとするわよ」


「なるほど……」


「だから私、今から東京に戻るわ」


「えっ?」


理解しがたい発言に思わず声を上げる。


「私の我慢も限界だし、彼との交際をいい加減認めてもらうわ。父と祖父母に味方になってもらって、時間がかかっても母を説得する。その対策のために一刻も早く帰りたいの」


「私も一緒に戻って説明しようか?」


麗の真剣な表情を見て、力になりたいと強く思った。


「ありがとう。でもこれは母と私が解決すべき問題だから、気持ちだけもらっておくわ。せっかくの休暇だし唯花は京都を堪能してきて」


「麗……でも……」


「もし私を助けてくれるなら、予定通り招待されたホテルに宿泊してほしいの。ドタキャンはさすがに失礼だから」


我がままを言ってごめんね、と麗が目を伏せる。


「それは構わないけど……いいの? 私にはラッキーな話でしかないわよ」


「唯花が宿泊して感想を教えてくれたら、私もラッキーよ」


「感想はもちろん伝えるけど……」


「ありがとう! じゃあ申し訳ないけどお願いね。宿泊名義は私になっているから、ホテル内の施設を使う際は私の名前を伝えて。唯花は血縁者だとホテルには説明しておくから」


うなずくと、麗はホッとしたような表情を見せた。
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