旅先恋愛~一夜の秘め事~
『……なんでしばらく話を聞いていないうちにそんな展開になるの?』


彼から告白された週の金曜日の昼過ぎに、ハトコから電話がかかってきた。

どうやら遅めの昼休みらしい。

私は以前の会社での休日出勤の振替調整で、午後から半休になっている。

軽く買い物を済ませ、先ほど自宅に着いたところだ。

ちなみに暁さんは急遽夕方から企画会議になったらしく、今夜はずいぶん帰宅が遅くなる予定だと連絡をもらっていた。

いつものように先に休むようにとも言われている。


古越さんの話から今日に至るまでを告げたところ、彼女は呆れたようにため息を吐いた。


『本当、余計な真似をしてくれる令嬢ね……でも、ちょうどよかったんじゃないの?』


「え?」


『だって、唯花はずっと気にしていたでしょ? 椿森副社長の本心も、自分が告白されていない現実にも』


的確な指摘に言い返せない。


『椿森副社長の考えを知るいい機会なんじゃない? しっかりぶつかってみたら? 入籍もして、自分の子どもを身ごもっている女性を蔑ろにはしないわよ。告白もされたんだし』


あの告白の日から彼の態度にこれといった大きな変化はない。

ただ、キスをする前や抱きしめる瞬間に私に“好きだ”と告げてくれる。

嬉しいのに、一瞬戸惑ってしまう自分が嫌になる。
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