旅先恋愛~一夜の秘め事~
「……彼の“好き”と私の“好き”の重さや順番は違うから。暁さんにとって私は二番目の存在だもの」


『なんでそんなに自信がないの? 結婚の前後で椿森副社長の態度があからさまに変わったわけでもないでしょ。勝手な思い込みで視野を狭めたらダメよ。不安はわかるけど、結局本心はその人にしかわからないのよ』


諭されて、小さく息を吐く。

ハトコの意見は正しい。


きっと私も当事者じゃなかったら同じように考えただろう。

なぜ自分のことになると、こうも自信を無くしてしまうのか。


暁さんは出会った頃は冷たい印象だったが、一緒に過ごす時間が増えるにつれて変わってきた。

細やかな気遣いや思いやり、ふとした瞬間に見せてくれる柔らかな面差しはいつも私を幸せにしてくれた。


『相手に気持ちをさらけ出して向き合ってほしいと思うなら、自分も同じようにしなくちゃ。片方だけが我慢したり、つらい思いをするのはおかしいわ。唯花もきちんと椿森副社長に本心を告白すべきよ』


ハトコの指摘が耳に痛い。


『唯花の気持ちは理解してるつもりよ。でも今の状態はフェアじゃないわ。告白されたら返事をするのは当たり前でしょ? 椿森副社長も不安を感じているかもしれないわ』


「うん……」


『返事をするときに、気になっている点を全部尋ねたらいいのよ。何事にも慎重なのは唯花の長所だけど、難しく考えすぎよ』


「ありがとう、麗。私、聞いてみる」
< 123 / 173 >

この作品をシェア

pagetop