旅先恋愛~一夜の秘め事~
役員室が立ち並ぶフロアに到着する。
お弁当は加住室長が持ってくれていた。
エレベーターホールを出てすぐのところで加住室長のスマートフォンが着信を知らせた。
「どうぞ、電話に出てください」
促す私に軽く断り、彼は電話で話し出す。
どうやら不測の事態が起きたようだった。
「あの、ここから先はひとりで大丈夫ですし、どうぞ行ってください」
通話中に話しかけるのはマナー違反だと思案しつつも小声で告げると、加住室長はしばし考えこむように眉間に皺を寄せる。
その後も少し会話を続け、通話を終えた彼は申し訳なさそうな表情を見せた。
「すみません」
「いえ、私のほうこそお忙しいときに申し訳ありません」
頭を下げると止められ、紙袋を渡された。
加住室長がエレベーターホールへと慌ただしく引き返すのを見送ってから副社長室に向かった。
小さな緊張とワクワクした気持ちを抱えて向かう足取りは軽い。
目の前に副社長室の扉が見えたとき、室内から誰かの話し声が聞こえた。
このタイミングで入室して丈夫だろうかと足を止めたとき、副社長室の扉が少し開いているのに気づいた。
「まったく……勝手な行動は慎んでいただきたいのですが、副社長?」
「あの状況では仕方ないだろ。俺の中では最大限の譲歩だ」
耳に飛び込んできた声から、室内にいるのは堤さんだとわかった。
お弁当は加住室長が持ってくれていた。
エレベーターホールを出てすぐのところで加住室長のスマートフォンが着信を知らせた。
「どうぞ、電話に出てください」
促す私に軽く断り、彼は電話で話し出す。
どうやら不測の事態が起きたようだった。
「あの、ここから先はひとりで大丈夫ですし、どうぞ行ってください」
通話中に話しかけるのはマナー違反だと思案しつつも小声で告げると、加住室長はしばし考えこむように眉間に皺を寄せる。
その後も少し会話を続け、通話を終えた彼は申し訳なさそうな表情を見せた。
「すみません」
「いえ、私のほうこそお忙しいときに申し訳ありません」
頭を下げると止められ、紙袋を渡された。
加住室長がエレベーターホールへと慌ただしく引き返すのを見送ってから副社長室に向かった。
小さな緊張とワクワクした気持ちを抱えて向かう足取りは軽い。
目の前に副社長室の扉が見えたとき、室内から誰かの話し声が聞こえた。
このタイミングで入室して丈夫だろうかと足を止めたとき、副社長室の扉が少し開いているのに気づいた。
「まったく……勝手な行動は慎んでいただきたいのですが、副社長?」
「あの状況では仕方ないだろ。俺の中では最大限の譲歩だ」
耳に飛び込んできた声から、室内にいるのは堤さんだとわかった。