旅先恋愛~一夜の秘め事~
……一応の心当たりはある。


なんの因果か、行く先々で出会う古越の令嬢だ。

何度断っても手を変え品を変え、しつこく縁談を申し込んできていた。

元々曾祖父同士が懇意にしていたらしいが、父も俺も相手方にほぼ面識はない。

由緒ある家柄なのはわかるが、あの母と娘は俺の外見と背景しか見ていないのがまるわかりで辟易していた。

最低限の儀礼的な態度をとってはいたが、唯花に対する失礼な振る舞いはさすがに目に余る。


しかも結婚指輪を買い求めた際に、余計な情報を口にした。

やたらと俺の周辺を調べ回っているのは知っていたが、害にならないだろうと高を食って放置していたのが仇になった。

まさか唯花本人の前で話すとは思いもしなかった。
< 133 / 173 >

この作品をシェア

pagetop