旅先恋愛~一夜の秘め事~
俺は“大切な人”をずっと捜し続けてきた。


三年前、社長である父親に、京都の大型商業施設のプロジェクトを任された。

官民の施設を融合させる大掛かりなもので、周囲からの期待も地元の注目も大きかった。


自慢じゃないが、幼い頃から俺は優秀だった。

勉学はもちろん、課題も試験も実家の稼業もそつなくこなして生きてきた。

今思えば、挫折を知らない俺はただの傲慢な人間だったと思う。

若さゆえの勢いもあった。

絶対に失敗できないプロジェクトで、大きな壁にぶち当たった。

誘致した企業に、直前になってことごとく辞退される事態に陥ってしまった。

契約内容が企業側が思い描いていたものと違っていたという。

こんな間際になって、と責任転嫁のごとく反論したのもいけなかった。

なにもかもが後手の悪循環に陥り、自分の無能さ、無知さ、思い上がりを思い知った。


結局父が介入し、なんとか契約をまき直して事なきを得たが、それでもオープン日時はずれてしまった。

父から厳しい𠮟責を受け、反省点を列挙するように言われた。

このプロジェクトの一連の事象は今までの人生の中で一番落ち込んだ出来事だった。
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