旅先恋愛~一夜の秘め事~
『今日は友人の結婚式だったんです。初めてここのホテルを利用したのですが、傘を貸してくださったり、サービスもすべてがとても素晴らしくて! また宿泊したいです』


頬を赤く染めて、彼女は俺が今しがた出てきたばかりの系列ホテルを褒めちぎる。

披露宴のサービスも料理もホテル内の設備も、こちらが驚くほどよく観察していた。


『私、ホテルが大好きなんですよ。仕事で落ち込んだり嫌な出来事があったときは、次はどのホテルに宿泊しようかと想像してやり過ごすんです。励みになるんですよ』


今回利用したホテルは私の大のお気に入りになりました、と頬を緩めた彼女の姿に不覚にも泣きたくなった。

この系列ホテルのサービスのリニューアルに俺は以前携わっていた。

自分の仕事が誰かの心に残る嬉しさ、やりがいを感じた。

なによりも、淡々と成果だけを見て、機械的にこなしてきた仕事への考え方が大きく変わった瞬間だった。

目の前の彼女は、俺に足りないものを無邪気に教えてくれた。
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