旅先恋愛~一夜の秘め事~
「待ってください! 京都で出会って数日、大切な人って……なにか勘違いされていませんか? 副社長から説明されていないのですか?」
「え……? 暁さんの大切な人は堤さん、ですよね?」
「違います! 私は先週婚約者と入籍しました。今、住民票もあります!」
そう言って、かなりの個人情報になるのに堤さんは住民票の写しを証拠と言わんばかりに見せてくれた。
確かにそこには“妻”という記載があった。
……間に合わなかったの?
すでに堤さんが結婚していたという事実に、血の気が引く。
「確かに副社長と私は学生時代からの友人同士ですが、これまでお互いに恋愛感情を抱いたことは一度もありません。私の入籍を副社長はすでにご存知ですし、祝福してくださっています。そもそも副社長の大切な人は私ではありません」
はっきりと告げる堤さんの堂々とした態度は、嘘をついているように見えなかった。
「まったくうちの副社長はなにをしているの……!」
堤さんが綺麗な面差しを怒りで歪ませる。
知ったばかりの事実に混乱していると、堤さんのバッグから振動音が響いた。
「……すみません、失礼します」
私にひと言断った堤さんが、スマートフォンを耳に当てて応答する。
「え……? 暁さんの大切な人は堤さん、ですよね?」
「違います! 私は先週婚約者と入籍しました。今、住民票もあります!」
そう言って、かなりの個人情報になるのに堤さんは住民票の写しを証拠と言わんばかりに見せてくれた。
確かにそこには“妻”という記載があった。
……間に合わなかったの?
すでに堤さんが結婚していたという事実に、血の気が引く。
「確かに副社長と私は学生時代からの友人同士ですが、これまでお互いに恋愛感情を抱いたことは一度もありません。私の入籍を副社長はすでにご存知ですし、祝福してくださっています。そもそも副社長の大切な人は私ではありません」
はっきりと告げる堤さんの堂々とした態度は、嘘をついているように見えなかった。
「まったくうちの副社長はなにをしているの……!」
堤さんが綺麗な面差しを怒りで歪ませる。
知ったばかりの事実に混乱していると、堤さんのバッグから振動音が響いた。
「……すみません、失礼します」
私にひと言断った堤さんが、スマートフォンを耳に当てて応答する。