旅先恋愛～一夜の秘め事～
１４．「ふたりだけの結婚式を挙げよう」
「はい、ご馳走様。たくさん食べたね」


目の前で両手を挙げて笑う長女、華(はな)ににっこりと微笑みかける。

今月から離乳食を開始し、今、少しずつ量を増やしている。

幸いにも嬉しそうに口を開けてくれる娘の姿にホッとしている。


今から約半年前に私は華を出産した。

予定日の三日前に産声を上げた、愛しい娘の姿に激しい痛みや疲労は一気に吹き飛んだ。

無事に産まれてきてくれたことに、ただただ涙が零れた。

傍らに立つ暁さんの目も真っ赤で潤んでいた。

長い時間付き添ってくれた疲れも見せず、震える声で伝えてくれた。


『お疲れ様、唯花。本当にありがとう』


涙目の暁さんの姿に、さらに涙が止まらなくなったのは言うまでもない。

絶対に出産に立ち会うと、妊娠中から周囲に公言していた夫は、ずっと仕事を調整していた。

妊娠後期になり、お腹が大きくなった私を心配し、帰宅を早め家事も積極的に行ってくれた。


『重いものはもつな』


『動きすぎるな』


心配をしすぎる夫の姿に、麗や堤さんは呆れていたけれど、彼の優しい態度が嬉しかった。
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