旅先恋愛~一夜の秘め事~
2.「また迷ったのか?」
大満足の買い物を済ませ、ガイドブックに記載されていた観光スポットをバスで訪れると時間はあっという間に過ぎた。

夕食を近くの店ですませ、キャリ―バッグを引き、ホテルに向かう。

最寄り駅すぐの場所にそびえ立つ、二十五階建てのホテルは遠目からもわかりやすい。

煌びやかさに気後れしつつ小さく息を吐き、意を決してフロントへ足を進める。

麗が前もって事情を伝えていたせいか、特段なにも言われず、ベルボーイに付き添われ部屋へと向かう。

会社関係者が来ていないか冷や冷やしながら歩いていたため、施設説明をしてくれるベルボーイの声がきちんと耳に入っていなかった。

部屋に到着し、ひとりになってやっとひと息ついた。


「手続きはすべて麗の名前で行ったし……大丈夫よね」


誰に確認するでもなく声を発して、改めて室内を見回す。


入室してすぐの、私が立っているリビングルームには大きめのソファがあり、センターテーブルにはウエルカムフルーツと美しい生花が飾られている。

さらにふたつの寝室と洗面スペースがある。

食事はすべて部屋で準備するとフロントで言われたが、断った。

こんな豪華な部屋でひとり食事をするのは寂しい。

観光にも出かけるつもりだし、必要なときのみ部屋での食事をお願いした。
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