旅先恋愛~一夜の秘め事~
玄関ドアが開く音が聞こえた。

お腹が満たされ、ほんの少しうとうとしだした華を抱いたまま、玄関へと向かう。


「ただいま……っと」


娘が眠りかけている姿を見て、瞬時に声をひそめた暁さんが頬を緩ませる。


「お帰りなさい。早く帰ってきてくれたのね、ありがとう」


まだ午後六時になったところだ。


「ああ……ちょっと、な」


ふわりと相好を崩した彼は手早く手洗いを済ませ、ラフな格好に着替える。

黒い長袖シャツにグレーのパンツ姿という何気ない装いが本当に様になる。

本格的に眠ってしまい、重さが増した娘をそっと大きな手で暁さんが抱き上げる。

彼の片腕にすっぽりおさまった華は、父親の匂いに安心したようでスヤスヤ寝息を立てている。

愛娘の額を長い指で愛し気に撫で、彼はリビングに置いたベビーベッドに寝かせた。

ふたりであどけない寝顔を見つめながら、顔を見合わせる。

その後彼に促され、ソファに隣同士に座った。


「話があるんだ」


私の左隣に腰かけた暁さんが、私の左手を自身の右手で優しく包み込む。
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