旅先恋愛~一夜の秘め事~
「あの、暁さんはこちらで勤務されているんですか?」
正直、勤務という表現が正しいか不明だ。
先ほど入店時に私はチケットを出したが、彼は手ぶらだった。
けれどすぐにこの席へ案内された点から鑑みて、この人は高い地位にいる気がする。
「ああ、そんなところだ」
曖昧に線引きされ、それ以上問えなかった。
「唯花さんはここへは休暇かなにかで?」
さらりと名前を呼ばれ、一瞬息を吞んだ。
名乗りはしたがてっきり、芳賀の名字で呼ばれると思っていた。
低めのゆったりした声が耳に残り、反応が遅れる。
「は、はい。まとまった休みがとれたので」
「へえ、いいな。ここにはいつまでいるんだ?」
「明日には帰る予定です。あの、なんで私が観光客だとわかったんですか?」
「昨日、明らかに道慣れてない様子だったから」
簡潔な答えに、なるほど、と独りごちる。
「京都は初めて?」
「いえ、三年前に一度、友人の結婚式で来ました。でもそのときは、ほぼとんぼ返りだったので今回は色々と観光したいんです」
「そうか……時間があれば案内したいんだが、あいにくここ数日は仕事が入っているんだ」
「とんでもないです。そんなつもりでお話したわけでは」
予期せぬ返答に驚く。
私は人見知りではないが、優れた対人スキルがあるわけではない。
出会ったばかりの人に案内してもらうのは心苦しいし、緊張する。
正直、勤務という表現が正しいか不明だ。
先ほど入店時に私はチケットを出したが、彼は手ぶらだった。
けれどすぐにこの席へ案内された点から鑑みて、この人は高い地位にいる気がする。
「ああ、そんなところだ」
曖昧に線引きされ、それ以上問えなかった。
「唯花さんはここへは休暇かなにかで?」
さらりと名前を呼ばれ、一瞬息を吞んだ。
名乗りはしたがてっきり、芳賀の名字で呼ばれると思っていた。
低めのゆったりした声が耳に残り、反応が遅れる。
「は、はい。まとまった休みがとれたので」
「へえ、いいな。ここにはいつまでいるんだ?」
「明日には帰る予定です。あの、なんで私が観光客だとわかったんですか?」
「昨日、明らかに道慣れてない様子だったから」
簡潔な答えに、なるほど、と独りごちる。
「京都は初めて?」
「いえ、三年前に一度、友人の結婚式で来ました。でもそのときは、ほぼとんぼ返りだったので今回は色々と観光したいんです」
「そうか……時間があれば案内したいんだが、あいにくここ数日は仕事が入っているんだ」
「とんでもないです。そんなつもりでお話したわけでは」
予期せぬ返答に驚く。
私は人見知りではないが、優れた対人スキルがあるわけではない。
出会ったばかりの人に案内してもらうのは心苦しいし、緊張する。