旅先恋愛~一夜の秘め事~
今のこの状況ですら、信じられないくらいなのに。

これまでもひとり、もしくは麗や友人たちと旅行した経験はあるが、こんな風に自然に再会したり、誘いを受けた記憶はない。

暁さんには、いわゆるナンパとかそういった類の下心がまったく感じられない。

むしろ彼の華やかな外見上、私が言い寄っていると勘違いされてもおかしくない。


「昨日から何度も助けていただいて、ありがとうございます。あの、朝食をいただきに行きませんか?」


「ああ、そうだな。話し込んで悪かった」


立ち上がり、食事が置いてある場所へと並んで向かう。


その後、意外にも和やかな時間を過ごせた。

暁さんは普段は東京で勤務しているそうだが、京都での仕事に現在携わっているため、すでに半月近く滞在しているらしい。

私が彼にぶつかったビルは京都支店なのだという。

ちなみに現在三十一歳で、私の年齢を伝えると驚かれた。

道に迷っていたせいか、ずいぶん年下と思われていたらしく、喜んでいいのか悲しんでいいのか複雑な心境になった。
< 23 / 173 >

この作品をシェア

pagetop