旅先恋愛~一夜の秘め事~
部屋に向かう途中、このホテルのティーサロンで出されているケーキが絶品だと教えてもらった。
京都在住の人気パティシエが特別に納品してくれているそうだ。
口数は少ないがふたりきりでいても不思議と気まずくない。
包み込まれた手の体温に心地よさを覚えながらも、落ち着かない気持ちでいっぱいだった。
「送ってくださってありがとうございます」
「どういたしまして」
部屋の前に着き、彼と向かい合い礼を伝えると穏やかな返事が返ってきた。
「あの、じゃあ……失礼しま」
す、と言いかけた途端、グイッと腕を引かれた。
一気に前に傾いた体を暁さんが受けとめ、抱きしめられる。
ふわりと周りに立ち上るシトラスの香りに鼓動が反応する。
「……警戒心は?」
耳元でまるで誘惑するように囁かれ、彼の腕の中で思わず息を吞む。
「最後の最後まで気を抜くべきじゃないだろ?」
茶化すような言い方をしつつ、私の乱れた髪を耳にそっとかける。
僅かに頬に触れる骨ばった指の感触が心を乱す。
「と、突然すぎます……!」
反論の言葉が見つからず、悔し紛れに言い返すと、フッと口角を上げる。
京都在住の人気パティシエが特別に納品してくれているそうだ。
口数は少ないがふたりきりでいても不思議と気まずくない。
包み込まれた手の体温に心地よさを覚えながらも、落ち着かない気持ちでいっぱいだった。
「送ってくださってありがとうございます」
「どういたしまして」
部屋の前に着き、彼と向かい合い礼を伝えると穏やかな返事が返ってきた。
「あの、じゃあ……失礼しま」
す、と言いかけた途端、グイッと腕を引かれた。
一気に前に傾いた体を暁さんが受けとめ、抱きしめられる。
ふわりと周りに立ち上るシトラスの香りに鼓動が反応する。
「……警戒心は?」
耳元でまるで誘惑するように囁かれ、彼の腕の中で思わず息を吞む。
「最後の最後まで気を抜くべきじゃないだろ?」
茶化すような言い方をしつつ、私の乱れた髪を耳にそっとかける。
僅かに頬に触れる骨ばった指の感触が心を乱す。
「と、突然すぎます……!」
反論の言葉が見つからず、悔し紛れに言い返すと、フッと口角を上げる。