旅先恋愛~一夜の秘め事~
「黙っていて悪かった。暁は漢字の読み方を変えただけだ」
「い、いえ、謝罪の必要はありません。私もきちんと名乗っておらず申し訳ございません」
彼ほどの地位であれば、簡単に素性を話せないのは当然だ。
「ハトコがこちらに招待されたので誘ってもらったんです。でもハトコに急用ができて私だけ宿泊していたんです」
「ああ、それで宿泊名簿が芳賀になってたのか」
「はい」
「黙っていた俺が悪いが、緊張せずこれまで通りに接してくれ」
私の変化を察したのか、彼が困ったように眉尻を下げる。
そう言われても、どう対応するのが正解かわからず逡巡していると、堤さんが助け船を出してくれた。
「副社長、私はこれから秘書室長と打ち合わせがありますので戻ります。綿貫様にケーキの試食をお願いされてはいかがですか?」
「そうだな……頼んでもいいか?」
彼が私に問いかける。
「試食、ですか?」
「ええ、あちらのテーブルに置いているケーキは新作の試作品なんです。女性の意見を伺いたかったので、よろしければお願いできませんか?」
堤さんが元々座っていたテーブルを指し示し、優し気な眼差しを向ける。
「素人の私で構わないのですか?」
「ああ、むしろそのほうが有難い」
椿森副社長の真剣な口調に小さく首を縦に振り、了承する。
「ありがとう」
ふわりと花が綻ぶような笑顔を見せられて、胸が甘く疼いた。
「い、いえ、謝罪の必要はありません。私もきちんと名乗っておらず申し訳ございません」
彼ほどの地位であれば、簡単に素性を話せないのは当然だ。
「ハトコがこちらに招待されたので誘ってもらったんです。でもハトコに急用ができて私だけ宿泊していたんです」
「ああ、それで宿泊名簿が芳賀になってたのか」
「はい」
「黙っていた俺が悪いが、緊張せずこれまで通りに接してくれ」
私の変化を察したのか、彼が困ったように眉尻を下げる。
そう言われても、どう対応するのが正解かわからず逡巡していると、堤さんが助け船を出してくれた。
「副社長、私はこれから秘書室長と打ち合わせがありますので戻ります。綿貫様にケーキの試食をお願いされてはいかがですか?」
「そうだな……頼んでもいいか?」
彼が私に問いかける。
「試食、ですか?」
「ええ、あちらのテーブルに置いているケーキは新作の試作品なんです。女性の意見を伺いたかったので、よろしければお願いできませんか?」
堤さんが元々座っていたテーブルを指し示し、優し気な眼差しを向ける。
「素人の私で構わないのですか?」
「ああ、むしろそのほうが有難い」
椿森副社長の真剣な口調に小さく首を縦に振り、了承する。
「ありがとう」
ふわりと花が綻ぶような笑顔を見せられて、胸が甘く疼いた。