旅先恋愛~一夜の秘め事~
彼の部屋は最上階にあった。

私が宿泊している部屋より更に広く、豪華な内装に息を呑む。

どうやら仕事場も兼ねているらしい。


『どうせここに毎日通うのだから、宿泊したほうが時間の無駄を省ける』


あっけらかんと話されて納得してしまった。

入ってすぐの大きなリビングルームと個室が仕事部屋で、その奥は私室として使用しているそうだ。


私室の前で私を降ろした彼が鍵を開け、扉を開く。

手を引かれ入った部屋には、ふたり掛けのソファと大きなキングサイズのベッドがあった。


「お前の全部に触れて俺のものにしたい」


扉を閉めた彼が、滴り落ちそうな色香を滲ませた目を私に向ける。

ドクンドクンと鼓動が速まっていく。

返事を求めるように、私の頬にそっと大きな手が触れた。

私の気持ちは決まっている。

たとえそれが今夜だけの出来事でも。


そろりと伸ばした腕で彼の首元に抱きつく。

私の行動に驚いたのか、暁さんが一瞬動きを止める。

そしてすぐに強く抱きしめ返された。

頬に寄せられた唇が言葉を紡ぐ。


「……抱くぞ」


首元でうなずいた私の髪に彼が口づけた。

顔を上げると、情欲が宿る目に見つめられる。

真っ白なシーツの上にふたりで倒れこむ。

大きな手を私の後頭部に回し、嵐のようなキスが繰り返される。


「あの、私……シャワーもなにも……」


「待てない」


私の現実的な申し出を一蹴した暁さんは、首筋に唇で触れる。

皮膚の薄い部分を甘噛みされ、体に甘い痺れががはしった。

指先を口元に含まれ、彼の熱を感じて震える。
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