旅先恋愛~一夜の秘め事~
「んっ……ああ……っ」


室内に響く甘い水音と体が溶けそうな感覚に、ひとつになったと実感する。

涙の膜で揺らぐ視界に、汗を滲ませた彼の姿が映る。

壮絶な色気を放ち、髪をかき上げる仕草に心臓が壊れそうな音を立てる。

彼の色香に魅入られて視線を外せずにいると、気づいた暁さんが妖しく口元を歪める。


「考え事をする余裕があるとはね」


「え……? あっ」


勘違いされたのか、一層激しくなる律動に思考が途切れる。



こんな風に肌を重ねるなんて思いもしなかった。

けれどたとえ誰かに責められても、心から好きになった男性に抱かれたいと願った。

繋がらない未来しかなくとも、この夜を後悔はしない。


「可愛いな……唯花、もっと俺に溺れろ」


女嫌いと噂されている人とは思えない、甘い台詞に泣きたくなる。


「可愛く、なんか」


反論する声は、あっという間に濃厚な口づけに吞み込まれる。

至近距離にある、整いすぎた面差しから漏れる色香に惑わされる。


起こされた体をぎゅうっと抱きしめられ、熱い吐息がひっきりなしに漏れた。

彼をさらに奥深くに受け入れ、広い背中に思わず爪を立ててしまう。


「俺を見ろ」


過ぎた刺激に瞼を閉じてしまう私に、彼が甘い命令を下す。

激しく私を揺さぶり、攻めたてる彼にも普段の冷静さが見られない。

むき出しの彼の感情をぶつけられているようで嬉しくて、思わず自分から口づけた。


「ん……唯花!」


一層激しさを増す律動と迫りくる快感に声を漏らしながら、身を任せた。
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