旅先恋愛~一夜の秘め事~
二週間前に彼女に会った際、京都で研修があると話していた。

友人の結婚式で三年前に一緒に訪れて以来の京都旅を楽しみにしている様子だった。


『二次会前に雨が降り出して、皆で慌てたのも今となっては楽しい思い出よね』


麗の言葉に、友人たちとの懐かしい情景が鮮やかによみがえる。


『新幹線に乗っている間もずっと話してたっけ。ところで京都で研修って珍しいわね』


『うちの会社が関西在住の社員用に研修センターを新設するって以前に話したでしょ? 最近完成してその視察も兼ねた体験研修なの』


従業員代表として、新施設についての率直な意見を社長に求められたらしい。


『研修は二日間なんだけど、その後もうひとつ仕事があるの。京都で新規開業した取引先のホテルへ招待されているの。招待されたのは父なんだけど、外せない仕事が急に入ってね。私が代理で宿泊するのよ』


『招待ってすごいわね』


さすが名家の芳賀家だ。


『それで相談なんだけど、唯花も一緒に泊まってくれない? 近々休暇を取るって言ってたでしょ?』


『ええっ? 私は部外者だしダメよ。麗の仕事の邪魔にもなるし』


予想外の誘いを慌てて断る。


『実は取引先に宿泊の感想を伝えなくちゃいけないの。部屋はセミスイートルームで広いし、平気よ。唯花はホテル好きだし、私より正確に施設や設備をチェックできるわ。父も喜ぶし、お願いよ』


麗に両手を合わせて頼み込まれ、困惑する。
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