旅先恋愛~一夜の秘め事~
その後も仕事を教えていただき、私の本社一日目は無事に終了した。
堤さんの教え方はとてもわかりやすく丁寧で、私の戸惑いや焦りまでにも配慮してくれていた。
ほんの少し一緒に過ごしただけだが、堤さんはとても魅力的な人だとわかった。
翌週になると、社内の雰囲気や場所にも少しずつ慣れてきた。
木曜日の夕方近くに営業課に書類を届けに行く途中、給湯室の前を通りかかると女性たちの話し声が聞こえてきた。
「ねえ、堤さんって京都支社に完全に異動するって本当?」
「まさか、副社長がお気に入りの秘書を手離すわけないじゃない」
「えっ、じゃあ副社長の“大切な人”って堤さんなの? でも結婚されるのよね?」
盗み聞きをしてはいけないと思いつつも、足が止まってしまう。
暁さんの、大切な人?
「それ、副社長には想う人がいるって噂でしょ。堤さんは学生時代からの友人だと聞いたわ。京都支社から引き抜いて、強引に自分の秘書に抜擢したくらいだから、可能性はありそうだけど」
「堤さんと一緒にいるときの副社長は雰囲気が柔らかいものね」
「わかる! あっ、もうこんな時間。資料室に行かなくちゃ」
女性たちが出てきそうな様子に、慌てて足を進める。
暁さんと堤さんの関係を疑うつもりはないのに、胸の奥が鉛をのみこんだかのように重くなる。
ふたりの気安い雰囲気は以前から知っている。
気にする必要はないのに、女性たちの会話が耳にこびりついて離れなかった。
堤さんの教え方はとてもわかりやすく丁寧で、私の戸惑いや焦りまでにも配慮してくれていた。
ほんの少し一緒に過ごしただけだが、堤さんはとても魅力的な人だとわかった。
翌週になると、社内の雰囲気や場所にも少しずつ慣れてきた。
木曜日の夕方近くに営業課に書類を届けに行く途中、給湯室の前を通りかかると女性たちの話し声が聞こえてきた。
「ねえ、堤さんって京都支社に完全に異動するって本当?」
「まさか、副社長がお気に入りの秘書を手離すわけないじゃない」
「えっ、じゃあ副社長の“大切な人”って堤さんなの? でも結婚されるのよね?」
盗み聞きをしてはいけないと思いつつも、足が止まってしまう。
暁さんの、大切な人?
「それ、副社長には想う人がいるって噂でしょ。堤さんは学生時代からの友人だと聞いたわ。京都支社から引き抜いて、強引に自分の秘書に抜擢したくらいだから、可能性はありそうだけど」
「堤さんと一緒にいるときの副社長は雰囲気が柔らかいものね」
「わかる! あっ、もうこんな時間。資料室に行かなくちゃ」
女性たちが出てきそうな様子に、慌てて足を進める。
暁さんと堤さんの関係を疑うつもりはないのに、胸の奥が鉛をのみこんだかのように重くなる。
ふたりの気安い雰囲気は以前から知っている。
気にする必要はないのに、女性たちの会話が耳にこびりついて離れなかった。