旅先恋愛~一夜の秘め事~
「綿貫さんが椿森副社長と知り合われたのはいつですか?」
「……今年の二月です」
突然変わった質問の意図がわからぬまま、正直に伝える。
「椿森副社長にはずっと大切にされている女性がいらっしゃるのはご存知?」
問いかけに思わず目を見開くと、古越さんは楽し気に目を細める。
「長い時間、あきらめきれずに捜されていたそうです。椿森副社長がずっと京都で精力的に仕事をされていたのはすべて、その方のためなんですって」
強い力で心臓を鷲掴みにされた気がした。
「京都出身のその女性には婚約者がいて、近々挙式予定だそうですよ」
フフ、と古越さんが可愛らしい声を漏らす。
「椿森副社長がよく使用されているロゴマークも、その方に縁のものだとか」
「……ロゴマークはご自身が関わった施設に使用しているだけだと伺いましたが」
微かな記憶を頼りに口を開くと、古越さんはすうっと目を細める。
「建前に決まっていますわ。本当は思い入れのある場所や大切な方への想いを表すために、使用されているんですよ」
確信めいた言い方に心が揺らぐ。
胸が鋭利な刃物で切り裂かれたように痛い。
「もしかしてその方よりご自分が愛されるとでも? 私は椿森副社長を待つ覚悟も、後々一番になる自信もあります。有能な方ですし、いずれは自社に利益をもたらす存在の大切さに気づかれますわ。最後に選ばれるのは私です」
これまでの声とは打って変わって、氷のように冷たい声と視線が私を射抜く。
彼女の目には強い敵意と嫉妬が滲んでいた。
「……今年の二月です」
突然変わった質問の意図がわからぬまま、正直に伝える。
「椿森副社長にはずっと大切にされている女性がいらっしゃるのはご存知?」
問いかけに思わず目を見開くと、古越さんは楽し気に目を細める。
「長い時間、あきらめきれずに捜されていたそうです。椿森副社長がずっと京都で精力的に仕事をされていたのはすべて、その方のためなんですって」
強い力で心臓を鷲掴みにされた気がした。
「京都出身のその女性には婚約者がいて、近々挙式予定だそうですよ」
フフ、と古越さんが可愛らしい声を漏らす。
「椿森副社長がよく使用されているロゴマークも、その方に縁のものだとか」
「……ロゴマークはご自身が関わった施設に使用しているだけだと伺いましたが」
微かな記憶を頼りに口を開くと、古越さんはすうっと目を細める。
「建前に決まっていますわ。本当は思い入れのある場所や大切な方への想いを表すために、使用されているんですよ」
確信めいた言い方に心が揺らぐ。
胸が鋭利な刃物で切り裂かれたように痛い。
「もしかしてその方よりご自分が愛されるとでも? 私は椿森副社長を待つ覚悟も、後々一番になる自信もあります。有能な方ですし、いずれは自社に利益をもたらす存在の大切さに気づかれますわ。最後に選ばれるのは私です」
これまでの声とは打って変わって、氷のように冷たい声と視線が私を射抜く。
彼女の目には強い敵意と嫉妬が滲んでいた。