訳あり子育て中は 御曹司からの猛攻にご注意下さい
カランカラン。
「いらっしゃいませ」

ドアの開く音とともに振り返ると、やって来たのは淳之介さん。

「ブレンド」
「はい」

私がマンションに同居するようになってから、淳之介さんが『プティボワ』に来る回数が増えている。
今まではモーニングを目当てに10日に一度ほどやってきていたのが、2日に一度くらい顔を出すようになった。
朝食は家で食べているからモーニングを頼むことはなくなって、今ではコーヒーかランチを注文することが多い。

「私もコーヒーを飲もうかな?」
カウンター席に座った淳之介さんの隣に、麗華が寄ってきた。

正直、麗華の行動に対しては勝手にどうぞって感じ。
好きにしたらいい。
でも、淳之介さんはどう思っているんだろう。

「仕事中じゃないのか?」

それは荒屋さんの方に向けられた冷たい言葉。
普段は聞くことのない硬質な声。

「淳之介さんが忙しくてなかなか会う時間がないから、この時間にしたんですよ。秘書室の人からこの時間に来るって聞いて、待っていたんですから」
まったく悪びれもせず言う麗華を、ある意味凄いと思う。

「仕事をさぼってまで待っていてほしいと言った覚えはないが?」
「それは・・・淳之介さんに会いたかったからです」
大きな目をぱちぱちさせて、上目遣いに見上げる麗華の必殺ポーズ。

これで落ちる男って、本当にバカだと思う。
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