訳あり子育て中は 御曹司からの猛攻にご注意下さい
「営業はそんなに暇なのか?」
麗華には一切触れず、荒屋さんの方を見る淳之介さん。

「上から彼女のお世話を頼まれていまして」
「ふーん。きっと親父の差し金だな」

淳之介さんの父上と言えば、中野コンツェルンの総帥。
一緒に住むようになってから淳之介さんについて調べてみて、驚いた。
中野商事の専務ってだけでもすごいのに中野コンツェルンの跡取りだったなんて、おかげであのマンションにも納得できた。

「ねー淳之介さん、父がお見合いの日取りを決めたいと言っていますが、いつがいいですか?」

やっぱり麗華の相手は淳之介さんか。
淳之介さんと麗華がなんて、ちょっと意外な取り合わせ。でも、麗華も一応代議士の娘でお母様は元華族のお姫様だし、二人の間に縁談話が持ち上がっても不思議じゃない。

「悪いがその話に俺は関わっていない。親父がなんて言ったのかは知らないが、縁談を受けた覚えはない」
「もう淳之介さんたらそんなこと言って」
きっぱりはっきり断られたはずの麗華は、あきらめる様子もなく淳之介さんとの距離を縮めようとする。

「大体君は、今日からうちで働くんじゃないのか?コーヒーを飲んで時間を潰すだけなら辞めてもらってもいいんだぞ」
厳しい表情を隠すことなく、麗華を睨み付ける淳之介さん。

「大丈夫ですよ、今はコーヒーブレイクです。休憩が終わったらすぐに仕事に戻りますから。ね、荒屋さん」

淳之介さんの言葉は、麗華に届かないらしい。
ここまで邪険に言われても嫌われていると気づかない麗華がうらやましい。
すごいなぁ、こういうのを空気が読めないって言うんだ。
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