訳あり子育て中は 御曹司からの猛攻にご注意下さい
「さぁ、もういいだろう戻ろうか?」
コーヒーを飲み終わったところで荒屋さんが立ち上がった。

「はーい」
不満そうに、でも席を立つ麗華。

ブブブ ブブブ。
ちょうどそのタイミングで荒屋さんの携帯に着信。

「ちょっと待ってね」
荒屋さんが電話に出たことで、待つことになった麗華が私の方へ歩み寄る。

「ねえ、あなたもう少し身だしなみに気を使うべきだと思うわ」
「はあ?」
「客商売のくせにお化粧もろくにしていないし、服だって靴だってボロボロじゃない。子供じゃないんだから自分の身の回りぐらいきれいにするべきだと思うわよ」

クッ、悔しい。
でも、確かに靴も服も最近全く買っていない。
1人で生活していたときには週末には買い物に行き、シーズンごとに流行の服を買っていたけれど、今はそんな時間の余裕もない。
だからって、そのことについて麗華に言われる覚えはない。

「ほっといてよ」
吐き捨てるように言ってしまった。

「君たち、知り合いなのか?」
私と麗華との関係を知らない淳之介さんは、不思議そうにこちらを見ている。

「この子、中学高校時代の同級生なんですけれど、今日偶然ここで再会して」
「ふーん」
私と麗華が友達って言うのが淳之介さんには意外らしい。

「私と同じ24歳なのに子供っぽいでしょ。学生時代はずっとロングヘアだったからもう少し綺麗だったんですけれどね」

何も知らずに余計なことをベラベラとしゃべる麗華を黙らせる方法も見つからず、私はただうつむくことしかできなかった。
< 63 / 191 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop