訳あり子育て中は 御曹司からの猛攻にご注意下さい
学生時代から麗華はとってもわがままだった。
いつも自分が1番じゃないと気がすまなくて、標的を見つけては意地悪していた。
私も何度かぶつかって喧嘩になったこともあるし、できることならば関わりたくない人間の1人。
そんな麗華に淳之介さんと同居していることが知れれば、きっと大騒ぎになるだろう。
絶対に、それだけは避けなくてはいけない。

「りこちゃんきょうよるごはんはなに?」
「今日はね、焼きそば」
「やった」

焼きそばって、私にとっては比較的手抜きなメニュー。
野菜と肉と麺を炒めてソースをかければできてしまう。リクエストで目玉焼きをのせたところで手間なんてたかが知れている。
そんなもので喜んでくれる登生に申し訳ないなと思いながら、今日の私は手の込んだメニューを作る気力がなかった。

淳之介さんと私はただの同居人。恋人でもないしこの先どうなる間柄でもない。たとえ恥ずかしい部分を見られても気にする事はないと思っているけれど、今日麗華に馬鹿にされたところを淳之介さんに見られて落ち込んでしまった。

靴だって服だってお金がなくて買わないんじゃない。今は登生の子育てでその手間も時間の余裕もないだけ。
でも忙しさを言い訳に、私は女性としての身だしなみを失ってしまったのかもしれない。麗華の言葉を聞いてそう感じた。
そして、そんな私が淳之介さんのそばにいて良いのだろうかと考えてしまった。
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