冷酷王の元へ妹の代わりにやってきたけど、「一思いに殺してください」と告げたら幸せになった
「私を大切にしているなんて、不思議」
オルテンスは自分が死ぬのを嫌だと言う人のことを、自分のことを嫌いではないと言う人のことが理解が出来ない。
だって、オルテンスはそんな風に言われる存在ではないのだ。
オルテンスは、いつも人から疎まれてきた。その存在を隠されるように生きてきていた。だからオルテンスは自分を大切だと思っている人のことが理解が出来ない。
そもそも人を大切にする気持ちも、オルテンスにはよくわからない。
「……ねぇ、ミオラ。私が死ぬのが嫌だとそう陛下は言ってくれたの」
「私もそう思ってますわ。オルテンス様が亡くなるの嫌だと思いますから」
「嫌だって思うのって、どうして? 私が王族の血を引くから? でも私は王族の血を引いていても、他の家族みたいに特別じゃないよ?」
オルテンスがどうしてだろうとでもいう風にそう問いかけるので、ミオラは胸が痛くなった。
まるで王族の血を引くことしか自分に価値がないのだと、オルテンスは言っている。
自分はそれ以上の何かを持っていないと、そんな風に告げるオルテンスは何処までもいつも通りだ。それは彼女にとってそれが当たり前だから。閉じられた世界で生きてきた人間は、その与えられ続けた価値観以外を知らない。
オルテンスは幾らこの国で穏やかで夢のような暮らしをしていたとしても、今まで生きてきた価値観を放棄出来ない。
「オルテンス様、違いますよ」
「……違う?」
「はい。オルテンス様が私たちの国に来てくださったのは、オルテンス様が王族の血を引くからです。王族の血を引くことはオルテンス様を語るにあたって重要な要素です。でもそれだけがオルテンス様じゃないんですよ」
ミオラはオルテンスにわかるように、丁寧な口調でそう告げる。
「……王族の血を引くだけが私じゃない?」
「はい。オルテンス様は王族のお姫様です。だからこそ、此処にいます。私はオルテンス様に会えて嬉しいので、オルテンス様が王族のお姫様で嬉しいです」
「……うん。私もミオラと会えて嬉しい」
「ふふ、ありがとうございます。私たち、相思相愛ですねー」
ミオラはオルテンスのことを可愛いなと思いながら、にこにこしている。オルテンスの言葉がよっぽど嬉しかったらしい。
「それでですね。私はオルテンス様のことが、単純に好きで大切だと思っているんですよ」
「……好き?」
「はい。私はオルテンス様のことが可愛くて、好きだと思っています」
誰かに好きだと、好ましいとそんな風に言われることさえもない人生をオルテンスは歩んできていた。だからこそ、その言葉に首をかしげている。
その様子を直視していたミオラは、「可愛いっ」と口元を抑える。
「オルテンス様はとても可愛いです。素直で、まるで小動物みたいで、可愛いなぁっていつも思ってます」
「……可愛いって、私を指す言葉じゃないよ? 妹を指す言葉なんじゃないかな」
「私はオルテンス様の妹様がどういう方かは知りません。会った事もないですし。でもオルテンス様に酷い真似をしていた人たちは好きじゃないです。それよりもオルテンス様、貴方は凄い可愛いんですよ!」
可愛い、などと言われるのは今までなかったことなのでオルテンスはよくわからないと思っていた。
可愛いという単語はもちろん知っている。動物などを見て可愛いと思うこともオルテンスにはある。だけれども自分のことを可愛いなどという人のことは良く分からない。
「可愛くないと思う」
「可愛いんです! オルテンス様がそうは行っても、私たちが可愛いと言えば可愛いのです。もっと自分が可愛いことを理解してもらわないと!」
「えっと、どうして?」
「自分のことを可愛いって自覚した女の子はもっと可愛くなるんです。私はもっと生き生きとしていて可愛いオルテンス様を見たい! 今ももちろん可愛いですけれど、そうなった方がきっともっと可愛いですからね」
そんなことを言われて、オルテンスは困惑したままの表情である。
オルテンスはにこにこ笑っているミオラを見ながら、とても不思議な気持ちになっている。
「……私を大切にしているなんて、不思議」
オルテンスはぼそりっとそんな言葉をつぶやくのだった。
だって、オルテンスはそんな風に言われる存在ではないのだ。
オルテンスは、いつも人から疎まれてきた。その存在を隠されるように生きてきていた。だからオルテンスは自分を大切だと思っている人のことが理解が出来ない。
そもそも人を大切にする気持ちも、オルテンスにはよくわからない。
「……ねぇ、ミオラ。私が死ぬのが嫌だとそう陛下は言ってくれたの」
「私もそう思ってますわ。オルテンス様が亡くなるの嫌だと思いますから」
「嫌だって思うのって、どうして? 私が王族の血を引くから? でも私は王族の血を引いていても、他の家族みたいに特別じゃないよ?」
オルテンスがどうしてだろうとでもいう風にそう問いかけるので、ミオラは胸が痛くなった。
まるで王族の血を引くことしか自分に価値がないのだと、オルテンスは言っている。
自分はそれ以上の何かを持っていないと、そんな風に告げるオルテンスは何処までもいつも通りだ。それは彼女にとってそれが当たり前だから。閉じられた世界で生きてきた人間は、その与えられ続けた価値観以外を知らない。
オルテンスは幾らこの国で穏やかで夢のような暮らしをしていたとしても、今まで生きてきた価値観を放棄出来ない。
「オルテンス様、違いますよ」
「……違う?」
「はい。オルテンス様が私たちの国に来てくださったのは、オルテンス様が王族の血を引くからです。王族の血を引くことはオルテンス様を語るにあたって重要な要素です。でもそれだけがオルテンス様じゃないんですよ」
ミオラはオルテンスにわかるように、丁寧な口調でそう告げる。
「……王族の血を引くだけが私じゃない?」
「はい。オルテンス様は王族のお姫様です。だからこそ、此処にいます。私はオルテンス様に会えて嬉しいので、オルテンス様が王族のお姫様で嬉しいです」
「……うん。私もミオラと会えて嬉しい」
「ふふ、ありがとうございます。私たち、相思相愛ですねー」
ミオラはオルテンスのことを可愛いなと思いながら、にこにこしている。オルテンスの言葉がよっぽど嬉しかったらしい。
「それでですね。私はオルテンス様のことが、単純に好きで大切だと思っているんですよ」
「……好き?」
「はい。私はオルテンス様のことが可愛くて、好きだと思っています」
誰かに好きだと、好ましいとそんな風に言われることさえもない人生をオルテンスは歩んできていた。だからこそ、その言葉に首をかしげている。
その様子を直視していたミオラは、「可愛いっ」と口元を抑える。
「オルテンス様はとても可愛いです。素直で、まるで小動物みたいで、可愛いなぁっていつも思ってます」
「……可愛いって、私を指す言葉じゃないよ? 妹を指す言葉なんじゃないかな」
「私はオルテンス様の妹様がどういう方かは知りません。会った事もないですし。でもオルテンス様に酷い真似をしていた人たちは好きじゃないです。それよりもオルテンス様、貴方は凄い可愛いんですよ!」
可愛い、などと言われるのは今までなかったことなのでオルテンスはよくわからないと思っていた。
可愛いという単語はもちろん知っている。動物などを見て可愛いと思うこともオルテンスにはある。だけれども自分のことを可愛いなどという人のことは良く分からない。
「可愛くないと思う」
「可愛いんです! オルテンス様がそうは行っても、私たちが可愛いと言えば可愛いのです。もっと自分が可愛いことを理解してもらわないと!」
「えっと、どうして?」
「自分のことを可愛いって自覚した女の子はもっと可愛くなるんです。私はもっと生き生きとしていて可愛いオルテンス様を見たい! 今ももちろん可愛いですけれど、そうなった方がきっともっと可愛いですからね」
そんなことを言われて、オルテンスは困惑したままの表情である。
オルテンスはにこにこ笑っているミオラを見ながら、とても不思議な気持ちになっている。
「……私を大切にしているなんて、不思議」
オルテンスはぼそりっとそんな言葉をつぶやくのだった。