冷酷王の元へ妹の代わりにやってきたけど、「一思いに殺してください」と告げたら幸せになった
「ミオラが解いた方がいいっていうなら」
オルテンスが王都探索を終えて、少しが経過した。
オルテンスはよっぽど王都を歩いて回ったことが楽しかったのか、よくその話をミオラたちへとしている。嬉しそうに語る様子に、ミオラたちはほのぼのとした気持ちになっているものである。
だけれどもオルテンスは二度目のお出かけに関する要望は口にしたい。おそらく行きたいとは思っているだろうが……、やっぱり遠慮している様子である。
ミオラはそんなオルテンスを見ていると、準備をしなければいけないけれどまたオルテンスを連れて行かないと! というそういう気持ちでいっぱいになっていた。
「オルテンス様、本日は何をいたしますか?」
「んーと、ぶらぶらして日向ぼっこしながら本を読みたいかも」
「ふふ、じゃあまずは図書室で本を選んで向かいましょうか」
「うん」
すっかり王城内を自由に行き来しているオルテンスは、王城内の図書室にもよく訪れている。
色んな本を読んでオルテンスは知識を深め、今まで喋れなかった言語を学んだりもしている。オルテンスは祖国では学ぶ機会がなかっただけで、実際にはとても呑み込みの早い少女であった。
幾ら蔑ろにされていたからといって無能であるというわけではない。最も本当に天才的に頭が良いとかそういうわけでもないが……。
オルテンスは図書室へと向かい、本を選んでいく。
高い位置にあるものはミオラたちが脚立にのって取ってくれる。オルテンスは何冊かの本をそこから持ち出すと、庭へと向かった。
王城の庭師たちともオルテンスはすっかり顔見知りになっており、彼らはオルテンスの姿を見かけると嬉しそうにしている。オルテンスが声をかければ、彼らは笑いながら返事をしてくれる。
通常、王の花嫁候補は庭師にこうして気安く話しかけることは少ないが、オルテンスはそういうのはおかまいなしである。ちなみに過去にこの王城に滞在し、拒否されていった姫君たちはデュドナに気に居られようと必死で、それ以外を同じ人と思っていないような態度のものもいた。そういう花嫁候補を知った上で、オルテンスを知ると、すっかり庭師たちもオルテンスのことが好ましくなっているのだ。
オルテンスはミオラに用意してもらった椅子に腰かける。日差しを浴びすぎないようにパラソルまで準備してくれている。
その下で、オルテンスは楽しそうに本を読んでいる。
こうやって自由に本を読むこともオルテンスにとっては何よりも楽しいことだった。
すっかりオルテンスは王城を歩き回ることも、日向ぼっこのために外に行くことも躊躇わなくなっている。ミオラはその事実が何よりも嬉しいと思っていた。
オルテンスにはまだ遠慮があって、それでいて祖国に帰ることをオルテンスは考えている。
それでも本人が気づいていなくてもオルテンスはすっかりこの国に慣れている。
ミオラたちはオルテンスをどうにか、この国に留めるためにも彼女にとってこの場所が安心できる場所になる事が嬉しいと思っていた。
さて、しばらく読書を進めていたオルテンスの元へ、一人の侍女がやってくる。
その侍女は以前、オルテンスにかけられている魔法による誓約を見てくれた魔法使い――クシヤが王城にやってきたことを告げた。
オルテンスの身体の状況を見るためにこちらを訪れたのだろう。
それを聞いたオルテンスはミオラに促されて、クシヤの元へと向かった。
「オルテンス様、身体の調子はどうだ? 痛みなどはないか?」
「ない。此処での暮らしで痛い事、全然ないから」
クシヤから問いかけられた言葉にオルテンスはそんな風に答えながら何だか不思議な気分になる。
――祖国ではずっと、痛みばかりを与えられていた。その痛いことがオルテンスは嫌いだった。だけれども、この夢のような世界では、メスタトワ王国ではそういった痛みを感じる機会が全然ないのだ。
クシヤはオルテンスの言葉に少しほっとした様子を見せた。
口は悪いが、流石にオルテンスにかけられている誓約を見て心配はしているようである。
「それで、クシヤ卿。オルテンス様のそれを解く目途はたったのですか?」
「ああ。だけど、結構時間がかかるぞ。オルテンス様が死なないように解くが……、痛みは感じるかもしれない」
クシヤの言葉を聞いて、オルテンスは痛いことなのかと身体をぴくりと震わせる。
オルテンスにとって、痛いことは恐ろしいことだ。
「痛いの?」
「まぁ、そうだな。流石に簡単に解除は難しい。でもオルテンス様。これを解除出来たら今までのような苦しみはなくなるんだぞ。だから……俺にその誓約を解かせてくれないか?」
そう問いかけられて、オルテンスはミオラの方を見る。
「ミオラは、私にかけられているその魔法が解かれた方が嬉しいんだよね?」
「そうですよ! 解きましょう! そうじゃないと、オルテンス様がもっと苦しむことになりますから!!」
オルテンスはミオラのそんな言葉を聞いて、「ミオラが解いた方がいいっていうなら」とそれを了承するのだった。
その言葉を聞いて周りはほっとした様子を見せた。
オルテンスはよっぽど王都を歩いて回ったことが楽しかったのか、よくその話をミオラたちへとしている。嬉しそうに語る様子に、ミオラたちはほのぼのとした気持ちになっているものである。
だけれどもオルテンスは二度目のお出かけに関する要望は口にしたい。おそらく行きたいとは思っているだろうが……、やっぱり遠慮している様子である。
ミオラはそんなオルテンスを見ていると、準備をしなければいけないけれどまたオルテンスを連れて行かないと! というそういう気持ちでいっぱいになっていた。
「オルテンス様、本日は何をいたしますか?」
「んーと、ぶらぶらして日向ぼっこしながら本を読みたいかも」
「ふふ、じゃあまずは図書室で本を選んで向かいましょうか」
「うん」
すっかり王城内を自由に行き来しているオルテンスは、王城内の図書室にもよく訪れている。
色んな本を読んでオルテンスは知識を深め、今まで喋れなかった言語を学んだりもしている。オルテンスは祖国では学ぶ機会がなかっただけで、実際にはとても呑み込みの早い少女であった。
幾ら蔑ろにされていたからといって無能であるというわけではない。最も本当に天才的に頭が良いとかそういうわけでもないが……。
オルテンスは図書室へと向かい、本を選んでいく。
高い位置にあるものはミオラたちが脚立にのって取ってくれる。オルテンスは何冊かの本をそこから持ち出すと、庭へと向かった。
王城の庭師たちともオルテンスはすっかり顔見知りになっており、彼らはオルテンスの姿を見かけると嬉しそうにしている。オルテンスが声をかければ、彼らは笑いながら返事をしてくれる。
通常、王の花嫁候補は庭師にこうして気安く話しかけることは少ないが、オルテンスはそういうのはおかまいなしである。ちなみに過去にこの王城に滞在し、拒否されていった姫君たちはデュドナに気に居られようと必死で、それ以外を同じ人と思っていないような態度のものもいた。そういう花嫁候補を知った上で、オルテンスを知ると、すっかり庭師たちもオルテンスのことが好ましくなっているのだ。
オルテンスはミオラに用意してもらった椅子に腰かける。日差しを浴びすぎないようにパラソルまで準備してくれている。
その下で、オルテンスは楽しそうに本を読んでいる。
こうやって自由に本を読むこともオルテンスにとっては何よりも楽しいことだった。
すっかりオルテンスは王城を歩き回ることも、日向ぼっこのために外に行くことも躊躇わなくなっている。ミオラはその事実が何よりも嬉しいと思っていた。
オルテンスにはまだ遠慮があって、それでいて祖国に帰ることをオルテンスは考えている。
それでも本人が気づいていなくてもオルテンスはすっかりこの国に慣れている。
ミオラたちはオルテンスをどうにか、この国に留めるためにも彼女にとってこの場所が安心できる場所になる事が嬉しいと思っていた。
さて、しばらく読書を進めていたオルテンスの元へ、一人の侍女がやってくる。
その侍女は以前、オルテンスにかけられている魔法による誓約を見てくれた魔法使い――クシヤが王城にやってきたことを告げた。
オルテンスの身体の状況を見るためにこちらを訪れたのだろう。
それを聞いたオルテンスはミオラに促されて、クシヤの元へと向かった。
「オルテンス様、身体の調子はどうだ? 痛みなどはないか?」
「ない。此処での暮らしで痛い事、全然ないから」
クシヤから問いかけられた言葉にオルテンスはそんな風に答えながら何だか不思議な気分になる。
――祖国ではずっと、痛みばかりを与えられていた。その痛いことがオルテンスは嫌いだった。だけれども、この夢のような世界では、メスタトワ王国ではそういった痛みを感じる機会が全然ないのだ。
クシヤはオルテンスの言葉に少しほっとした様子を見せた。
口は悪いが、流石にオルテンスにかけられている誓約を見て心配はしているようである。
「それで、クシヤ卿。オルテンス様のそれを解く目途はたったのですか?」
「ああ。だけど、結構時間がかかるぞ。オルテンス様が死なないように解くが……、痛みは感じるかもしれない」
クシヤの言葉を聞いて、オルテンスは痛いことなのかと身体をぴくりと震わせる。
オルテンスにとって、痛いことは恐ろしいことだ。
「痛いの?」
「まぁ、そうだな。流石に簡単に解除は難しい。でもオルテンス様。これを解除出来たら今までのような苦しみはなくなるんだぞ。だから……俺にその誓約を解かせてくれないか?」
そう問いかけられて、オルテンスはミオラの方を見る。
「ミオラは、私にかけられているその魔法が解かれた方が嬉しいんだよね?」
「そうですよ! 解きましょう! そうじゃないと、オルテンス様がもっと苦しむことになりますから!!」
オルテンスはミオラのそんな言葉を聞いて、「ミオラが解いた方がいいっていうなら」とそれを了承するのだった。
その言葉を聞いて周りはほっとした様子を見せた。