冷酷王の元へ妹の代わりにやってきたけど、「一思いに殺してください」と告げたら幸せになった
「何だかすっきりした気持ち」
ぱちりと目を覚ましたオルテンス。
その場所はオルテンスに与えられている部屋だった。
どうして眠っているんだっけとオルテンスは首をかしげる。
そして自分にかけられている魔力による縛りを解くために、三日間眠っていなかったことを思い出す。
窓の外を見ればすっかり夜であった。
オルテンスは自分がいつ眠ったのかも覚えていない。どのくらい自分は眠っていたのだろうか? とそんなことを考えながらオルテンスはベッドから降りる。
なんでだか、とてもすっきりした気持ちにオルテンスはなっている。
オルテンスにとってその自分の心臓にまとわりつくように存在していた魔力は常に傍にあったものだった。それにより縛られている状況が当たり前だった。
でもそれが解けると、前よりもオルテンスの身体は軽かった。
解かなくても問題ないと、解かれても何も変わらないと――そう思っていたのに、身体が軽くなっていることがオルテンスは嬉しいと思った。
オルテンスは誰もいない部屋から出る。
そうしたら、「オルテンス様!! 目を覚ましたんですね」と嬉しそうな顔をしたミオラが駆け寄ってくる。
「ミオラ」
「オルテンス様、長い時間眠っていたんですよ。オルテンス様が目覚めて良かったです。身体の調子はどうですか?」
「何だかすっきりした気持ち」
「それは良かったです!! オルテンス様、魔力による縛りがなくなったことはとても喜ばしいことですが、自ら死のうとはしないでくださいね」
その言葉を聞いて、オルテンスはそっか、自分から死ねるのかと思った。
オルテンスは痛みを感じる日々が嫌だった。どうせこの夢のような場所から祖国に帰るのならば、また痛みに満ちた日々が訪れてしまう。
それが嫌だと、オルテンスは思っている。
だから一思いに、痛くないように死にたい。
そうおもっている気持ちはやっぱり変わらない。
それでも、此処での生活は本当に何処までも穏やかで、オルテンスにとって優しい世界なのだ。オルテンスを傷つける者が誰一人いなくて、オルテンスが痛い時に手を握ってくれる人がいる。そんな優しすぎる世界。
「……うん」
オルテンスの世界は、オルテンスが何をしようが気にしない人たちで溢れていた。彼女の祖国の人々はオルテンスが例えば死んだとしても悲しむことはなかっただろう。
だけど目の前にいるミオラは、オルテンスのことを心から心配してくれていることが分かる。そしてオルテンスに死んでほしくないと言ってくれる言葉が真実だということも分かる。
だから、もう少し夢を見ていてもいいのかもしれない……とオルテンスは思った。
この夢のようなメスタトワ王国での暮らしは永遠ではない。あくまで花嫁候補の一人として此処にいるだけで、オルテンスの命はあくまで祖国のものだから。
それでも此処での穏やかで優しい暮らしを、オルテンスは享受し続けようと思った。
オルテンスはこの国を訪れてから痛い目一つあっていないので、正直あの魔力による縛りが解けたからとどうなっているかという実感はわかない。今まで感じていた痛みよりどれだけいたくないのか……少しだけ検証したい気持ちにもオルテンスはなった。
でも……多分、それをすればミオラたちが悲しむだろうというのが分かる。
「陛下もオルテンス様のことを心配していたんですよ。陛下の元にも行きましょう」
「陛下が?」
「そうですよ。陛下も、それに私たちもオルテンス様が無事に目が覚めて本当に嬉しいんですよ」
デュドナが心配してくれていたと思うと、それに関してもオルテンスは嬉しくなった。
やっぱりオルテンスには、自分なんかを心配するミオラたちが理解出来なかったりもする。長年、どうでもいいものとして扱われていた心が簡単に溶けるはずはない。それでも……心配されることを嬉しいと思っている。
オルテンスはそれからミオラに連れられて、デュドナの元へと向かった。
もう夜というのもあってデュドナは自室にいるようだ。王の自室にこの時間から足を踏み入れていいのだろうか? とオルテンスは不安そうにミオラの方を見る。
「大丈夫ですよ。オルテンス様は陛下の花嫁候補ですしね。そもそも花嫁候補なんですから、もっと陛下と仲よくしていいんですよ。オルテンス様の可愛さがあれば陛下もいちころです」
「私、陛下倒さないよ?」
「そういうのじゃないです。女性としての魅力でこう……陛下を夢中にさせましょう」
「もっと無理だと思うけど。私にそんな魅力ないよ?」
「あります! オルテンス様はとっても可愛いです。私は一日中オルテンス様のことを見ていても飽きません」
ミオラにそんなことを言われても、オルテンスはやっぱり戸惑った表情のままである。
しかし可愛い可愛いと常に言われていると、本当に自分が可愛いのでは……と思ってしあみそうになるオルテンスである。
そんなことを考えながらオルテンスたちはデュドナの寝室にたどり着いた。
ミオラがノックをして、目が覚めたオルテンスを連れてきたことを言えば入室の許可をされる。
その場所はオルテンスに与えられている部屋だった。
どうして眠っているんだっけとオルテンスは首をかしげる。
そして自分にかけられている魔力による縛りを解くために、三日間眠っていなかったことを思い出す。
窓の外を見ればすっかり夜であった。
オルテンスは自分がいつ眠ったのかも覚えていない。どのくらい自分は眠っていたのだろうか? とそんなことを考えながらオルテンスはベッドから降りる。
なんでだか、とてもすっきりした気持ちにオルテンスはなっている。
オルテンスにとってその自分の心臓にまとわりつくように存在していた魔力は常に傍にあったものだった。それにより縛られている状況が当たり前だった。
でもそれが解けると、前よりもオルテンスの身体は軽かった。
解かなくても問題ないと、解かれても何も変わらないと――そう思っていたのに、身体が軽くなっていることがオルテンスは嬉しいと思った。
オルテンスは誰もいない部屋から出る。
そうしたら、「オルテンス様!! 目を覚ましたんですね」と嬉しそうな顔をしたミオラが駆け寄ってくる。
「ミオラ」
「オルテンス様、長い時間眠っていたんですよ。オルテンス様が目覚めて良かったです。身体の調子はどうですか?」
「何だかすっきりした気持ち」
「それは良かったです!! オルテンス様、魔力による縛りがなくなったことはとても喜ばしいことですが、自ら死のうとはしないでくださいね」
その言葉を聞いて、オルテンスはそっか、自分から死ねるのかと思った。
オルテンスは痛みを感じる日々が嫌だった。どうせこの夢のような場所から祖国に帰るのならば、また痛みに満ちた日々が訪れてしまう。
それが嫌だと、オルテンスは思っている。
だから一思いに、痛くないように死にたい。
そうおもっている気持ちはやっぱり変わらない。
それでも、此処での生活は本当に何処までも穏やかで、オルテンスにとって優しい世界なのだ。オルテンスを傷つける者が誰一人いなくて、オルテンスが痛い時に手を握ってくれる人がいる。そんな優しすぎる世界。
「……うん」
オルテンスの世界は、オルテンスが何をしようが気にしない人たちで溢れていた。彼女の祖国の人々はオルテンスが例えば死んだとしても悲しむことはなかっただろう。
だけど目の前にいるミオラは、オルテンスのことを心から心配してくれていることが分かる。そしてオルテンスに死んでほしくないと言ってくれる言葉が真実だということも分かる。
だから、もう少し夢を見ていてもいいのかもしれない……とオルテンスは思った。
この夢のようなメスタトワ王国での暮らしは永遠ではない。あくまで花嫁候補の一人として此処にいるだけで、オルテンスの命はあくまで祖国のものだから。
それでも此処での穏やかで優しい暮らしを、オルテンスは享受し続けようと思った。
オルテンスはこの国を訪れてから痛い目一つあっていないので、正直あの魔力による縛りが解けたからとどうなっているかという実感はわかない。今まで感じていた痛みよりどれだけいたくないのか……少しだけ検証したい気持ちにもオルテンスはなった。
でも……多分、それをすればミオラたちが悲しむだろうというのが分かる。
「陛下もオルテンス様のことを心配していたんですよ。陛下の元にも行きましょう」
「陛下が?」
「そうですよ。陛下も、それに私たちもオルテンス様が無事に目が覚めて本当に嬉しいんですよ」
デュドナが心配してくれていたと思うと、それに関してもオルテンスは嬉しくなった。
やっぱりオルテンスには、自分なんかを心配するミオラたちが理解出来なかったりもする。長年、どうでもいいものとして扱われていた心が簡単に溶けるはずはない。それでも……心配されることを嬉しいと思っている。
オルテンスはそれからミオラに連れられて、デュドナの元へと向かった。
もう夜というのもあってデュドナは自室にいるようだ。王の自室にこの時間から足を踏み入れていいのだろうか? とオルテンスは不安そうにミオラの方を見る。
「大丈夫ですよ。オルテンス様は陛下の花嫁候補ですしね。そもそも花嫁候補なんですから、もっと陛下と仲よくしていいんですよ。オルテンス様の可愛さがあれば陛下もいちころです」
「私、陛下倒さないよ?」
「そういうのじゃないです。女性としての魅力でこう……陛下を夢中にさせましょう」
「もっと無理だと思うけど。私にそんな魅力ないよ?」
「あります! オルテンス様はとっても可愛いです。私は一日中オルテンス様のことを見ていても飽きません」
ミオラにそんなことを言われても、オルテンスはやっぱり戸惑った表情のままである。
しかし可愛い可愛いと常に言われていると、本当に自分が可愛いのでは……と思ってしあみそうになるオルテンスである。
そんなことを考えながらオルテンスたちはデュドナの寝室にたどり着いた。
ミオラがノックをして、目が覚めたオルテンスを連れてきたことを言えば入室の許可をされる。