冷酷王の元へ妹の代わりにやってきたけど、「一思いに殺してください」と告げたら幸せになった
「おはようございます。陛下」
「デュドナ様、オルテンス様についてですが、とても幸せそうにしていますよ」
「……そうか」
「オルテンス様はちょっとした日常に幸福を感じられる方みたいですね。まだサーフェーズ王国でのオルテンス様の情報は集められてませんが、酷い生活をしていたのはすぐわかります。影がご飯あげなきゃとか凄い言ってますが」
「何で来て数日で篭絡されているんだ。我が国の暗部は」
デュドナは側付きのセールフィの言葉に何とも言えない表情である。オルテンスが花嫁候補として滞在してわずか数日。その間、オルテンスはデュドナやメスタトワ王国に何か望むこともなく、のんびりと過ごしていたようだ。
デュドナの花嫁候補としてこの王城にいるにも関わらず、デュドナに接触しようとはしてこない。食事は一緒にしているが、嬉しそうに食事をとっているばかりだ。
数日その様子を見ているだけでも、オルテンスが祖国で大変な暮らしをしていたことはうかがえるというものである。
ひと思いに殺してほしい――なんて言ってきた言葉は本心だったのだろうか、などとメスタトワ王国の者達も思っている。しかし、たった数日でオルテンスの全てを信じることは国としてはいけないことである。だからデュドナは警戒心を解かない。
「それだけ見ていて癒されるみたいですよ。デュドナ様もいつも難しい顔ばかりしていますから、オルテンス様を見て癒されたらどうですか?」
そんなことを言いながら、からかうようにセールフィは笑う。彼はデュドナと幼いころからの付き合いなので、この軽口である。
「馬鹿を言うな」
「馬鹿を言うなって酷いですね。本気で言っているんですけど」
「その方が性質が悪いだろう。なんだ、お前はあの姫に俺の花嫁になってほしいのか?」
「それはそれで楽しいと思いますよ。周りが癒される素晴らしい空間になりそうです」
「はぁ……」
すっかりセールフィもオルテンスのことを気に入っている様子であった。
デュドナが花嫁候補を誰一人として受け入れなかったのは、ただたんに彼女たちがデュドナの心を射止められなかったからである。あとはデュドナの時折見せる姿を彼女たちが恐れたからというのもあるだろう。
デュドナのことを、現状オルテンスは恐ろしいとは思っていないようだ。寧ろ、こんなによくしてもらっているのでオルテンスの中でのデュドナの好感度はとても高いと言えるだろう。
最もデュドナは、変わった姫だとしか現状オルテンスのことを思っていない。風変りの他国の姫だが、今のところは少なくともそれだけだ。気にならないわけではないが、特に自分から接しようとは思っていないようだ。
メスタトワ王国の王城の者達は徐々にオルテンスに心を許しているものの、デュドナは数日程度でオルテンスに心を許すものではなかった。
デュドナは政務を終えた後、溜息混じりに王城を歩く。
そして歩いている中で、何だか庭園の方が楽しそうな雰囲気を醸し出していた。何だかちらちらそちらを見て微笑んでいるものもいるようだ。
それを見てデュドナは何かあったのかと、そちらを見る。
――それを見て、デュドナは驚いた顔をする。
オルテンスが気持ちよさそうな顔をして眠っている。日焼けしないようにか侍女がパラソルをかかげている。それに加えて眠っているオルテンスに軽めの掛布団までかけられている。
「あ、陛下」
ミオラがそう言って声をかければ、その場で眠っているオルテンスを見守っている侍女たちが一斉に礼をする。
「……何をやっているんだ?」
「オルテンス様が日向ぼっこをしたいとおっしゃられてやってきたのですが、眠ってしまわれて」
「日向ぼっこ?」
「はい。とてもかわいらしいです」
すっかりミオラも篭絡されている様子に、デュドナは呆れた様子である。
そうやって会話を交わしていたら、オルテンスがうっすらと目を開ける。
寝ぼけた様子で、その黒い瞳をぱちくりとさせる。
そしてきょろきょろとあたりを見渡す。その後、デュドナと目が合う。
寝ぼけた様子のオルテンスは、デュドナの姿を見つけて慌てて立ち上がろうとして足をもつれさせる。
「慌てて起きなくていい」
デュドナがそう言えば、オルテンスは「おはようございます、陛下」と寝ぼけた様子で告げるのであった。
「……そうか」
「オルテンス様はちょっとした日常に幸福を感じられる方みたいですね。まだサーフェーズ王国でのオルテンス様の情報は集められてませんが、酷い生活をしていたのはすぐわかります。影がご飯あげなきゃとか凄い言ってますが」
「何で来て数日で篭絡されているんだ。我が国の暗部は」
デュドナは側付きのセールフィの言葉に何とも言えない表情である。オルテンスが花嫁候補として滞在してわずか数日。その間、オルテンスはデュドナやメスタトワ王国に何か望むこともなく、のんびりと過ごしていたようだ。
デュドナの花嫁候補としてこの王城にいるにも関わらず、デュドナに接触しようとはしてこない。食事は一緒にしているが、嬉しそうに食事をとっているばかりだ。
数日その様子を見ているだけでも、オルテンスが祖国で大変な暮らしをしていたことはうかがえるというものである。
ひと思いに殺してほしい――なんて言ってきた言葉は本心だったのだろうか、などとメスタトワ王国の者達も思っている。しかし、たった数日でオルテンスの全てを信じることは国としてはいけないことである。だからデュドナは警戒心を解かない。
「それだけ見ていて癒されるみたいですよ。デュドナ様もいつも難しい顔ばかりしていますから、オルテンス様を見て癒されたらどうですか?」
そんなことを言いながら、からかうようにセールフィは笑う。彼はデュドナと幼いころからの付き合いなので、この軽口である。
「馬鹿を言うな」
「馬鹿を言うなって酷いですね。本気で言っているんですけど」
「その方が性質が悪いだろう。なんだ、お前はあの姫に俺の花嫁になってほしいのか?」
「それはそれで楽しいと思いますよ。周りが癒される素晴らしい空間になりそうです」
「はぁ……」
すっかりセールフィもオルテンスのことを気に入っている様子であった。
デュドナが花嫁候補を誰一人として受け入れなかったのは、ただたんに彼女たちがデュドナの心を射止められなかったからである。あとはデュドナの時折見せる姿を彼女たちが恐れたからというのもあるだろう。
デュドナのことを、現状オルテンスは恐ろしいとは思っていないようだ。寧ろ、こんなによくしてもらっているのでオルテンスの中でのデュドナの好感度はとても高いと言えるだろう。
最もデュドナは、変わった姫だとしか現状オルテンスのことを思っていない。風変りの他国の姫だが、今のところは少なくともそれだけだ。気にならないわけではないが、特に自分から接しようとは思っていないようだ。
メスタトワ王国の王城の者達は徐々にオルテンスに心を許しているものの、デュドナは数日程度でオルテンスに心を許すものではなかった。
デュドナは政務を終えた後、溜息混じりに王城を歩く。
そして歩いている中で、何だか庭園の方が楽しそうな雰囲気を醸し出していた。何だかちらちらそちらを見て微笑んでいるものもいるようだ。
それを見てデュドナは何かあったのかと、そちらを見る。
――それを見て、デュドナは驚いた顔をする。
オルテンスが気持ちよさそうな顔をして眠っている。日焼けしないようにか侍女がパラソルをかかげている。それに加えて眠っているオルテンスに軽めの掛布団までかけられている。
「あ、陛下」
ミオラがそう言って声をかければ、その場で眠っているオルテンスを見守っている侍女たちが一斉に礼をする。
「……何をやっているんだ?」
「オルテンス様が日向ぼっこをしたいとおっしゃられてやってきたのですが、眠ってしまわれて」
「日向ぼっこ?」
「はい。とてもかわいらしいです」
すっかりミオラも篭絡されている様子に、デュドナは呆れた様子である。
そうやって会話を交わしていたら、オルテンスがうっすらと目を開ける。
寝ぼけた様子で、その黒い瞳をぱちくりとさせる。
そしてきょろきょろとあたりを見渡す。その後、デュドナと目が合う。
寝ぼけた様子のオルテンスは、デュドナの姿を見つけて慌てて立ち上がろうとして足をもつれさせる。
「慌てて起きなくていい」
デュドナがそう言えば、オルテンスは「おはようございます、陛下」と寝ぼけた様子で告げるのであった。