冷酷王の元へ妹の代わりにやってきたけど、「一思いに殺してください」と告げたら幸せになった
「私はこれから陛下と家族になるので」
「なぁ、オルテンス」
「なんですか?」
王城の庭園で腰かけて、二人で会話を交わす。
オルテンスは先ほどまでぐっすり眠っていたのもあってまだ少しだけ眠たそうである。
「……お前は、サーフェーズ王国のお前の血縁者に何かあるのは嫌か?」
デュドナはそう問いかける。
オルテンスはきょとんとした顔をする。
サーフェーズ王国の王と、自分の妹。血縁上の父親と、妹。痛い記憶しかないオルテンスは身体を震わす。
「……えっと、どうして、あの人たちのことを?」
「大丈夫だ。オルテンス。あいつらをお前に近づける気はない。ただ、あいつらには俺たちの結婚式の招待状は送っていないんだが……どうも無理やり来ようとしているんだ。それで俺はもしあいつらが招待状もないのに国境を越えようとしたら、あいつらが好き勝手にしたら処罰しようと思っている。俺はオルテンスに酷い真似をしてきた連中を許す気はない。きっかけさえあればサーフェーズ王国の王家をつぶす可能性だってある。それは、オルテンスは嫌か?」
今までのデュドナは、自分の意志だけで自分が好きなように相手の処罰を決めていた。まったくもって情に流されることなく、淡々と冷酷に進めるからこそ彼は冷酷王と呼ばれていた。
だけれどもやっぱりデュドナにとってみればオルテンスは特別な立場なのだろう。オルテンスが悲しむのならば、それをやめようかなどと思っているのかもしれない。
オルテンスはその言葉を聞いて、一瞬黙った。
だけど、次に続ける。
「……私は、この国に来るまでの日々は痛いことが多かった。ぶたれたり、けられたり、……そういう痛いことをした人は怖い。血は繋がっているけど、此処での日々が幸せで、楽しくて……だから私、血は繋がっていてもどうでもいいって思ってます。それに陛下は理由もなく何かするような人じゃないので、もし陛下が私の血縁上の父親たちに何かするとしても正当なものだと思います。私……冷たいかもしれないけれど、陛下の方が大切です」
自分が冷たい人間のように感じられて、オルテンスは目を伏せる。
「それは当たり前の感情だろう。自分に対して虐げてきた人間を好きになるのがおかしい。お前はもっとあいつらに怒っていい。もっと憎んでもいい」
「……んー、なんていうか、にくいとかはあんまりないです。痛かったなってはあるけれど。それになんというか……あの痛くて仕方がない日々があるからこそ、私は今の日々を幸せだって思います。それに陛下やミオラたちが気に入ってくれた私はその日々を過ごしたからこその私だから……。サーフェーズ王国で私が違う生活をしていたら、今の幸せは私にはなかったかもしれない。そう思ったら……憎いとかは思わなくて」
結局その人自身を作っているのは、その人自身の過去だ。
オルテンスはそれまで虐げられてきて、痛みに満ちた日々を過ごしてきて――そういう日々を過ごしてきたからこそ、今のオルテンスがいる。もちろん、ああいう痛みに満ちた日々を肯定するつもりはないけれども、過去は消えないものだ。
デュドナはオルテンスの言葉に笑った。
「そうか」
「はい。だから、まぁ、憎いとは思わないけれど……陛下が処罰をするようなことをあの人たちがするなら、やって全然問題ないです」
「そう言ってもらえると安心して行動出来るな」
「陛下は私が嫌だって言ったらやめるつもりだったんですか?」
「そうだな。別の方法を考えるかと思っていた」
「陛下はやっぱり優しいです」
オルテンスはデュドナの優しさを感じたのか、嬉しそうに笑みを溢した。
「まぁ、でもどんなくずでもお前の家族だから、あとから何かあったら言えよ?」
「大丈夫です。私はこれから陛下と家族になるので。だからあの人たちがどうなっても陛下がいればいいんです」
血がつながっただけの家族は居なくなるかもしれない。
だけれども自分を大切にしてくれる家族が出来るなら大丈夫だとオルテンスは笑うのだった。
「なんですか?」
王城の庭園で腰かけて、二人で会話を交わす。
オルテンスは先ほどまでぐっすり眠っていたのもあってまだ少しだけ眠たそうである。
「……お前は、サーフェーズ王国のお前の血縁者に何かあるのは嫌か?」
デュドナはそう問いかける。
オルテンスはきょとんとした顔をする。
サーフェーズ王国の王と、自分の妹。血縁上の父親と、妹。痛い記憶しかないオルテンスは身体を震わす。
「……えっと、どうして、あの人たちのことを?」
「大丈夫だ。オルテンス。あいつらをお前に近づける気はない。ただ、あいつらには俺たちの結婚式の招待状は送っていないんだが……どうも無理やり来ようとしているんだ。それで俺はもしあいつらが招待状もないのに国境を越えようとしたら、あいつらが好き勝手にしたら処罰しようと思っている。俺はオルテンスに酷い真似をしてきた連中を許す気はない。きっかけさえあればサーフェーズ王国の王家をつぶす可能性だってある。それは、オルテンスは嫌か?」
今までのデュドナは、自分の意志だけで自分が好きなように相手の処罰を決めていた。まったくもって情に流されることなく、淡々と冷酷に進めるからこそ彼は冷酷王と呼ばれていた。
だけれどもやっぱりデュドナにとってみればオルテンスは特別な立場なのだろう。オルテンスが悲しむのならば、それをやめようかなどと思っているのかもしれない。
オルテンスはその言葉を聞いて、一瞬黙った。
だけど、次に続ける。
「……私は、この国に来るまでの日々は痛いことが多かった。ぶたれたり、けられたり、……そういう痛いことをした人は怖い。血は繋がっているけど、此処での日々が幸せで、楽しくて……だから私、血は繋がっていてもどうでもいいって思ってます。それに陛下は理由もなく何かするような人じゃないので、もし陛下が私の血縁上の父親たちに何かするとしても正当なものだと思います。私……冷たいかもしれないけれど、陛下の方が大切です」
自分が冷たい人間のように感じられて、オルテンスは目を伏せる。
「それは当たり前の感情だろう。自分に対して虐げてきた人間を好きになるのがおかしい。お前はもっとあいつらに怒っていい。もっと憎んでもいい」
「……んー、なんていうか、にくいとかはあんまりないです。痛かったなってはあるけれど。それになんというか……あの痛くて仕方がない日々があるからこそ、私は今の日々を幸せだって思います。それに陛下やミオラたちが気に入ってくれた私はその日々を過ごしたからこその私だから……。サーフェーズ王国で私が違う生活をしていたら、今の幸せは私にはなかったかもしれない。そう思ったら……憎いとかは思わなくて」
結局その人自身を作っているのは、その人自身の過去だ。
オルテンスはそれまで虐げられてきて、痛みに満ちた日々を過ごしてきて――そういう日々を過ごしてきたからこそ、今のオルテンスがいる。もちろん、ああいう痛みに満ちた日々を肯定するつもりはないけれども、過去は消えないものだ。
デュドナはオルテンスの言葉に笑った。
「そうか」
「はい。だから、まぁ、憎いとは思わないけれど……陛下が処罰をするようなことをあの人たちがするなら、やって全然問題ないです」
「そう言ってもらえると安心して行動出来るな」
「陛下は私が嫌だって言ったらやめるつもりだったんですか?」
「そうだな。別の方法を考えるかと思っていた」
「陛下はやっぱり優しいです」
オルテンスはデュドナの優しさを感じたのか、嬉しそうに笑みを溢した。
「まぁ、でもどんなくずでもお前の家族だから、あとから何かあったら言えよ?」
「大丈夫です。私はこれから陛下と家族になるので。だからあの人たちがどうなっても陛下がいればいいんです」
血がつながっただけの家族は居なくなるかもしれない。
だけれども自分を大切にしてくれる家族が出来るなら大丈夫だとオルテンスは笑うのだった。