冷酷王の元へ妹の代わりにやってきたけど、「一思いに殺してください」と告げたら幸せになった
「私はとても幸せです」
「オルテンス、似合っている」
「ふふ、陛下もかっこいいです!」
オルテンスとデュドナの結婚式が行われる日は、まるでその結婚を神が祝福しているかのように晴天だった。
その明るく晴れた、オルテンスにとっては絶好のお昼寝日和の日が結婚式であることにオルテンスは嬉しそうにしていた。
まぁ、ウエディングドレスのオルテンスは流石に日向ぼっこのために寝転がる事は出来ないが……。
「陛下と結婚できるの嬉しいです」
「そうか」
「はい。私はとても幸せです」
オルテンスとデュドナの結婚式には、沢山の人たちが訪れている。
オルテンスが見た事がないぐらいの、数えきれないぐらいの人たち。
知らない人が沢山だけれども、オルテンスは怯えることはない。何故なら、隣にデュドナがいて、嬉しそうに見守っている知り合いたちがいるから。
誓いの言葉を告げて、口づけをする。
オルテンスはこんなに大勢の前でキスをするのって恥ずかしいなと思いながらも、ぽかぽかとした嬉しい気持ちになっていた。
これでデュドナと家族になれることが嬉しいのか、終始にこにこしているオルテンス。
初めてオルテンスの姿を見る他国からの使者たちは、あれが大国の王妃になる者かとオルテンスに視線を向けていたが、オルテンスは幸せなのでそういう視線にも特に気づいていなかった。
結婚式の後のパーティーでは、オルテンスは沢山の人たちと会話を交わした。
一生懸命会話を交わすオルテンスは、何だかんだメスタトワ王国で勉強して言語も堪能になっていたので沢山の人たちと会話を交わしていた。オルテンスが自分の国の言葉を少しでも話せることに彼らは嬉しそうにしていて、オルテンスは喋れるようになって良かったと嬉しそうに笑っていた。
ちなみにそんなオルテンスの隣にはデュドナがずっと控えていて、加えて王城の侍女たちもオルテンスに何かないようにときっちり警護されていたので、オルテンスが『冷酷王』に愛されているのは本当らしいと使者たちはより一層理解するのであった。
オルテンスは沢山のおめでとうを言われたことが嬉しかった。
仲良くなった貴族の夫人や令嬢たちも嬉しそうにオルテンスに話しかけていた。すっかりオルテンスと仲良くなった彼女たちは、オルテンスが幸せそうにしているのを見て嬉しそうな顔をしていた。
中にはオルテンスが王妃になるのを何とも言えない気持ちで見ていたものもいたようだが、デュドナがオルテンスを特別に思っている様子なのを見て諦めたようである。幾らデュドナに懸想するものがいたとしても、下手に手を出せば処罰されるだろうとメスタトワ王国の者達は分かっている。
幾らオルテンスに笑いかけているとしても……それはオルテンスがデュドナにとって特別な立場だからである。そうでなければ何か不快な真似をしたら処罰されるのは間違いない。それだけ恐ろしいということをサーフェーズ王国との一件で彼らは理解していたので馬鹿な真似をするものはいなかった。
そして結婚式を終えた後、オルテンスとデュドナにとっての初夜が行われた。
「陛下。初夜が何するかわかりませんが、よろしくお願いします。ミオラが、陛下に任せればいいって言ってました」
「……ああ」
オルテンスの無邪気な発言にデュドナは頷き、そして二人の初夜は行われたのであった。
メスタトワ王国。
その大国の王は、『冷酷王』と呼ばれていた。
美しい見た目を持つ王は、敵対するものに容赦がなかった。その王には各国から幾人もの花嫁候補が預けられ、王妃になるものを選別していたものの、なかなか王は王妃を選ばなかった。
『冷酷王』は人の心が分からないのだろうか。誰かを好きになることはないのではないか。
そう言ったことが噂され、何人もの姫君がメスタトワ王国から祖国へと帰されていった。
『冷酷王』が王妃を娶ることはないのではないか……などと、そんな風にメスタトワ王国内でも思われていた。
だけれども、その『冷酷王』が王妃を娶ることが決まった。
それはサーフェーズ王国という小国の、今まで噂一つ出たことがない姫君であった。
オルテンスという名のその姫君は、祖国では虐げられて生きていたのだという。サーフェーズ王国は『冷酷王』の怒りを買い、王家が変更されるという事態も起こった。
その事態そのものが、『冷酷王』が王妃を大切に思っているという証であった。
オルテンスは、灰色の髪に黒い瞳の笑うと可愛らしい少女であった。
王妃であるオルテンスを見た者たちは、あんな子が王妃になれるなら……と一瞬思ったものもいたようだが、『冷酷王』がオルテンスに接する様子を見て、その考えを改めたようである。
オルテンスはその後、二人の王子と三人の姫を産んだ。
大国の王室だというのに、『冷酷王』の妃はオルテンス一人だけであった。
そしてメスタトワ王国の王室は大変家族仲が良いと有名になっていた。
虐げられていた、噂さえも流れなかったひっそりと生きていた姫君が大国の王妃となり幸せになったその話は広く広められることになった。
そしてオルテンスは、最も幸福な王妃として有名になるのであった。
そのため、オルテンスに『冷酷王』と出会った時のことなどを聞くものも多かった。
だけれどもオルテンスがそれに苦笑していたのは、初対面で「一思いに殺してください」なんて口にしていたからである。
オルテンスは「一思いに殺してください」と告げて、その後デュドナと仲良くなって幸せになった。
でも流石にその事実は、あまり広められたくないオルテンスなのであった。
「あの時は何を言いだすかと思ったがな」
「……忘れてください」
「忘れないな」
デュドナの揶揄うような言葉に、オルテンスは少しだけ不満そうな顔をする。
だけれどもまぁ、幸せだからいいかとオルテンスは『冷酷王』の隣で幸せそうに笑うのだった。
「ふふ、陛下もかっこいいです!」
オルテンスとデュドナの結婚式が行われる日は、まるでその結婚を神が祝福しているかのように晴天だった。
その明るく晴れた、オルテンスにとっては絶好のお昼寝日和の日が結婚式であることにオルテンスは嬉しそうにしていた。
まぁ、ウエディングドレスのオルテンスは流石に日向ぼっこのために寝転がる事は出来ないが……。
「陛下と結婚できるの嬉しいです」
「そうか」
「はい。私はとても幸せです」
オルテンスとデュドナの結婚式には、沢山の人たちが訪れている。
オルテンスが見た事がないぐらいの、数えきれないぐらいの人たち。
知らない人が沢山だけれども、オルテンスは怯えることはない。何故なら、隣にデュドナがいて、嬉しそうに見守っている知り合いたちがいるから。
誓いの言葉を告げて、口づけをする。
オルテンスはこんなに大勢の前でキスをするのって恥ずかしいなと思いながらも、ぽかぽかとした嬉しい気持ちになっていた。
これでデュドナと家族になれることが嬉しいのか、終始にこにこしているオルテンス。
初めてオルテンスの姿を見る他国からの使者たちは、あれが大国の王妃になる者かとオルテンスに視線を向けていたが、オルテンスは幸せなのでそういう視線にも特に気づいていなかった。
結婚式の後のパーティーでは、オルテンスは沢山の人たちと会話を交わした。
一生懸命会話を交わすオルテンスは、何だかんだメスタトワ王国で勉強して言語も堪能になっていたので沢山の人たちと会話を交わしていた。オルテンスが自分の国の言葉を少しでも話せることに彼らは嬉しそうにしていて、オルテンスは喋れるようになって良かったと嬉しそうに笑っていた。
ちなみにそんなオルテンスの隣にはデュドナがずっと控えていて、加えて王城の侍女たちもオルテンスに何かないようにときっちり警護されていたので、オルテンスが『冷酷王』に愛されているのは本当らしいと使者たちはより一層理解するのであった。
オルテンスは沢山のおめでとうを言われたことが嬉しかった。
仲良くなった貴族の夫人や令嬢たちも嬉しそうにオルテンスに話しかけていた。すっかりオルテンスと仲良くなった彼女たちは、オルテンスが幸せそうにしているのを見て嬉しそうな顔をしていた。
中にはオルテンスが王妃になるのを何とも言えない気持ちで見ていたものもいたようだが、デュドナがオルテンスを特別に思っている様子なのを見て諦めたようである。幾らデュドナに懸想するものがいたとしても、下手に手を出せば処罰されるだろうとメスタトワ王国の者達は分かっている。
幾らオルテンスに笑いかけているとしても……それはオルテンスがデュドナにとって特別な立場だからである。そうでなければ何か不快な真似をしたら処罰されるのは間違いない。それだけ恐ろしいということをサーフェーズ王国との一件で彼らは理解していたので馬鹿な真似をするものはいなかった。
そして結婚式を終えた後、オルテンスとデュドナにとっての初夜が行われた。
「陛下。初夜が何するかわかりませんが、よろしくお願いします。ミオラが、陛下に任せればいいって言ってました」
「……ああ」
オルテンスの無邪気な発言にデュドナは頷き、そして二人の初夜は行われたのであった。
メスタトワ王国。
その大国の王は、『冷酷王』と呼ばれていた。
美しい見た目を持つ王は、敵対するものに容赦がなかった。その王には各国から幾人もの花嫁候補が預けられ、王妃になるものを選別していたものの、なかなか王は王妃を選ばなかった。
『冷酷王』は人の心が分からないのだろうか。誰かを好きになることはないのではないか。
そう言ったことが噂され、何人もの姫君がメスタトワ王国から祖国へと帰されていった。
『冷酷王』が王妃を娶ることはないのではないか……などと、そんな風にメスタトワ王国内でも思われていた。
だけれども、その『冷酷王』が王妃を娶ることが決まった。
それはサーフェーズ王国という小国の、今まで噂一つ出たことがない姫君であった。
オルテンスという名のその姫君は、祖国では虐げられて生きていたのだという。サーフェーズ王国は『冷酷王』の怒りを買い、王家が変更されるという事態も起こった。
その事態そのものが、『冷酷王』が王妃を大切に思っているという証であった。
オルテンスは、灰色の髪に黒い瞳の笑うと可愛らしい少女であった。
王妃であるオルテンスを見た者たちは、あんな子が王妃になれるなら……と一瞬思ったものもいたようだが、『冷酷王』がオルテンスに接する様子を見て、その考えを改めたようである。
オルテンスはその後、二人の王子と三人の姫を産んだ。
大国の王室だというのに、『冷酷王』の妃はオルテンス一人だけであった。
そしてメスタトワ王国の王室は大変家族仲が良いと有名になっていた。
虐げられていた、噂さえも流れなかったひっそりと生きていた姫君が大国の王妃となり幸せになったその話は広く広められることになった。
そしてオルテンスは、最も幸福な王妃として有名になるのであった。
そのため、オルテンスに『冷酷王』と出会った時のことなどを聞くものも多かった。
だけれどもオルテンスがそれに苦笑していたのは、初対面で「一思いに殺してください」なんて口にしていたからである。
オルテンスは「一思いに殺してください」と告げて、その後デュドナと仲良くなって幸せになった。
でも流石にその事実は、あまり広められたくないオルテンスなのであった。
「あの時は何を言いだすかと思ったがな」
「……忘れてください」
「忘れないな」
デュドナの揶揄うような言葉に、オルテンスは少しだけ不満そうな顔をする。
だけれどもまぁ、幸せだからいいかとオルテンスは『冷酷王』の隣で幸せそうに笑うのだった。