冷酷王の元へ妹の代わりにやってきたけど、「一思いに殺してください」と告げたら幸せになった
「本の中のお姫様はとても幸せそう」
オルテンスは、その日もぼーっとしながら日向ぼっこをしている。
庭師たちから花々の説明を聞きながら、オルテンスは嬉しそうに笑っている。
こうして日向ぼっこをするのがオルテンスの日課となっていた。いつも日向ぼっこをしながらにこやかに微笑むオルテンスのことを城のものたちは嬉しそうに見ている。
にこにこと微笑みながら、嬉しそうにしている様子を見ると見ているものも幸せになるものである。
「ねぇ、ミオラ。ミオラはどんなお花が好きなの?」
そして少しずつ、オルテンスはミオラとも仲良くなっていた。自分から中々話しかけなかったオルテンスが、ミオラへと話しかけるようになっている。これはミオラがオルテンスに沢山話しかけていた結果だと言えるだろう。
オルテンスはこんな風に沢山話しかけられることが、この国にやってくるまでなかった。話しかけられるからこそ、オルテンスも話しかけようとする。
今日はミオラからもらった本を手にしている。
このメスタトワ王国と、オルテンスの祖国であるサーフェーズ王国は言語が共通である。そうでなければ王族としての教育を特に受けてこなかったオルテンスはこの国で誰かと会話を交わすことなど出来なかっただろう。
オルテンスは妹姫の代わりにこの国にやってきたわけだが、花嫁候補というのが正式な花嫁になることはないだろうと思っている。何故なら、オルテンスは自分自身が選ばれると思うほど、自分に対する自信がない。教養もなければ、何の力も持たない。オルテンスはそういう少女である。
そのことを自分でもオルテンスは自覚している。
ちなみに拒否されてしまったが、オルテンスはまだ一思いに殺されることを諦めているわけではない。
オルテンスは穏やかな日々の中で、今までの辛い日々を忘れてしまいそうな……なんだか夢の国にいるような気分にずっとなっている。この場所が現実でないような、そんな気分である。
オルテンスがミオラから渡された本は、このメスタトワ王国で有名な童話らしい。
一人のお姫様が、幸せになる物語。
お姫様が愛され、満たされ、ハッピーエンドを迎える物語。
オルテンスは限られた世界を生きてきたので、こういう童話もほとんど読んだことがない。そういうものを与えられては来なかったから。オルテンスに同情したものが与えてくれたもの以外、オルテンスには何も与えられてこなかった。
捨てられた本をなんとか読むぐらいである。それか要らないからと下げ渡されたものとか、そのくらいだ。
「本の中のお姫様はとても幸せそう」
思わずオルテンスがそう呟いてしまったのは、自分が姫という立場でも、物語の中のお姫様とは全く違うから。
一般常識で言うと、お姫様というのは愛されて恵まれているものらしいということはオルテンスにも分かっている。でもオルテンスは王族の血を引くからこそ、大変だったと言えるだろう。正妃ではないものから産まれた王族の血。だからこそ、限られた世界から出されることもなく、閉鎖的な世界でただ生きていた。
オルテンスは、本の中のお姫様のように自分がなれるとは思っていない。閉じられていた世界から、こうしてきっかけがあり外に出たが、それでもオルテンスの世界はまだまだ閉じられていて、いつかまたあの閉鎖的で、恐ろしい世界に戻るのだと思っている。
オルテンスはぶるりっと身体を震わせた。
「オルテンス様、大丈夫ですか? 寒いですか?」
「いいえ、寒くはないわ」
優しい侍女。穏やかな時間。始めて出来る沢山のこと。
――でもそれは、やっぱり夢なのだ。夢のような、一時的な時間。決して永遠続くようなものではない。
オルテンスは本の中のお姫様と、自分という王族の血が流れるお姫様のことを比較してそう思う。
そしてやはり思うのだ。やっぱりこの場所で、殺してもらわないとと。
庭師たちから花々の説明を聞きながら、オルテンスは嬉しそうに笑っている。
こうして日向ぼっこをするのがオルテンスの日課となっていた。いつも日向ぼっこをしながらにこやかに微笑むオルテンスのことを城のものたちは嬉しそうに見ている。
にこにこと微笑みながら、嬉しそうにしている様子を見ると見ているものも幸せになるものである。
「ねぇ、ミオラ。ミオラはどんなお花が好きなの?」
そして少しずつ、オルテンスはミオラとも仲良くなっていた。自分から中々話しかけなかったオルテンスが、ミオラへと話しかけるようになっている。これはミオラがオルテンスに沢山話しかけていた結果だと言えるだろう。
オルテンスはこんな風に沢山話しかけられることが、この国にやってくるまでなかった。話しかけられるからこそ、オルテンスも話しかけようとする。
今日はミオラからもらった本を手にしている。
このメスタトワ王国と、オルテンスの祖国であるサーフェーズ王国は言語が共通である。そうでなければ王族としての教育を特に受けてこなかったオルテンスはこの国で誰かと会話を交わすことなど出来なかっただろう。
オルテンスは妹姫の代わりにこの国にやってきたわけだが、花嫁候補というのが正式な花嫁になることはないだろうと思っている。何故なら、オルテンスは自分自身が選ばれると思うほど、自分に対する自信がない。教養もなければ、何の力も持たない。オルテンスはそういう少女である。
そのことを自分でもオルテンスは自覚している。
ちなみに拒否されてしまったが、オルテンスはまだ一思いに殺されることを諦めているわけではない。
オルテンスは穏やかな日々の中で、今までの辛い日々を忘れてしまいそうな……なんだか夢の国にいるような気分にずっとなっている。この場所が現実でないような、そんな気分である。
オルテンスがミオラから渡された本は、このメスタトワ王国で有名な童話らしい。
一人のお姫様が、幸せになる物語。
お姫様が愛され、満たされ、ハッピーエンドを迎える物語。
オルテンスは限られた世界を生きてきたので、こういう童話もほとんど読んだことがない。そういうものを与えられては来なかったから。オルテンスに同情したものが与えてくれたもの以外、オルテンスには何も与えられてこなかった。
捨てられた本をなんとか読むぐらいである。それか要らないからと下げ渡されたものとか、そのくらいだ。
「本の中のお姫様はとても幸せそう」
思わずオルテンスがそう呟いてしまったのは、自分が姫という立場でも、物語の中のお姫様とは全く違うから。
一般常識で言うと、お姫様というのは愛されて恵まれているものらしいということはオルテンスにも分かっている。でもオルテンスは王族の血を引くからこそ、大変だったと言えるだろう。正妃ではないものから産まれた王族の血。だからこそ、限られた世界から出されることもなく、閉鎖的な世界でただ生きていた。
オルテンスは、本の中のお姫様のように自分がなれるとは思っていない。閉じられていた世界から、こうしてきっかけがあり外に出たが、それでもオルテンスの世界はまだまだ閉じられていて、いつかまたあの閉鎖的で、恐ろしい世界に戻るのだと思っている。
オルテンスはぶるりっと身体を震わせた。
「オルテンス様、大丈夫ですか? 寒いですか?」
「いいえ、寒くはないわ」
優しい侍女。穏やかな時間。始めて出来る沢山のこと。
――でもそれは、やっぱり夢なのだ。夢のような、一時的な時間。決して永遠続くようなものではない。
オルテンスは本の中のお姫様と、自分という王族の血が流れるお姫様のことを比較してそう思う。
そしてやはり思うのだ。やっぱりこの場所で、殺してもらわないとと。