聖女の身代わりとして皇帝に嫁ぐことになりました
えー、結論から言いますと、「万能薬」は成功していたそうです。
鼻血を出しそうなほどに興奮して駆け込んで来た司祭様はもとより、見たこともないくらいにテンションが高いアン、それから司祭様から聞いたミナとセバスチャンまでがわたしを取り囲んで、ベッドに寝ていなければ胴上げでもされそうな勢いだった。
まじですか~、とわたし一人だけ、ちょっぴり他人事なのは仕方がないと思う。
だって万能薬よ? まあ、少し前にゲームみたいにポーションとか作れたりしないのかなあ、とか暢気なことを考えたりもしたけれど、あれは熱にうなされて思考が明後日の方向に行っちゃってただけで、冷静になればそんなもの現実世界にあるわけないじゃないって思うじゃない?
世の中にポーションとか万能薬とかあったら医者がいらないっつーの。
まあ、聖王様と同等の魔力を持った人でないと作れないんだから量産できるものではないんだろうけど。……というか、つまりわたし、聖王様と同等の魔力があるってこと? びっくりだよ。聖女の力ってすごいんだね。
司祭様によると、作った万能薬は量がなかったので、二つの実験しかしなかったらしい。
半分を泥水に入れて、もう半分を怪我をした使用人を探してその傷にかけて見たらしい。
泥水に入れた方は、あら不思議、泥水が綺麗に澄んだ水に変化して、使用人の怪我にかけたほうは見る見るうちに傷が塞がったのだとか。
もともとただの水だったものがそんな変化をもたらせば、それは「万能薬」認定されてもおかしくないかもしれないけど、わたしはこの目で見たわけじゃないからまだあまり信じられない。
というか、これは少々面倒くさい流れになった気がしている。
司祭様は壺――もとい聖王シュバルツアの壺を、ベッドに上体を起こしているわたしの膝の上にちゃっかりのせて、次を期待していますと言わんばかりの視線を向けてくる始末だ。
このままだったら、わたし、ひたすら万能薬を生成させられる羽目にならない?
やだやだ、そんなの絶対いやだ。
第一万能薬なんて今までなくてもみんな幸せに生活していたんだからいらないでしょ!
しかしこれはいかんせん断りにくい雰囲気で、わたしは苦渋の策に出た。
「……ば、万能薬を作るのはなかなか魔力を使うので、その……一日一回にしていただきたいです……」
ぶっちゃけ魔力切れなんて起こしていないし、そもそもそれに底があるのかどうかもわからないが、視線を泳がせながらわたしがそう言えば、司祭様はあっさり引き下がった。
聖王シュバルツア様のほど魔力が必要なのだから、「聖王シュバルツアの壺」で万能薬を作るのは、それはそれは負担がかかるのだろうと勝手に解釈してくれたらしい。
ラッキーと言えばラッキーだが、「聖王シュバルツアの壺」はわたしが持っていた方がいいだろうと押し付けられ、なおかつ司祭様がいる間は、一日一回の万能薬の生成を頼まれてしまった。
のちのち、礼金として教会からお金もくれるらしい。
まあ、もとがただの水だから、たいした金額は期待できないだろうけど、ちょっとしたお金儲けだと思えば一日一回の作業くらい苦にはならないだろう。
万能薬と言うくらいだから風邪薬にもなるんだろうし、司祭様が帰ったあとは自分や使用人のみんな用に少し作っておいておいてもいいかもしれない。
――と、暢気なことを考えていたわたしだったけど、のちのち、教会からとんでもない大金が贈られてきたのを見た瞬間、一日一回なんて無駄な制限をつけずに量産して売りまくれば大金持ちになれたんじゃないだろうかと、後悔することになるのだが、それは数か月先のことになる。
鼻血を出しそうなほどに興奮して駆け込んで来た司祭様はもとより、見たこともないくらいにテンションが高いアン、それから司祭様から聞いたミナとセバスチャンまでがわたしを取り囲んで、ベッドに寝ていなければ胴上げでもされそうな勢いだった。
まじですか~、とわたし一人だけ、ちょっぴり他人事なのは仕方がないと思う。
だって万能薬よ? まあ、少し前にゲームみたいにポーションとか作れたりしないのかなあ、とか暢気なことを考えたりもしたけれど、あれは熱にうなされて思考が明後日の方向に行っちゃってただけで、冷静になればそんなもの現実世界にあるわけないじゃないって思うじゃない?
世の中にポーションとか万能薬とかあったら医者がいらないっつーの。
まあ、聖王様と同等の魔力を持った人でないと作れないんだから量産できるものではないんだろうけど。……というか、つまりわたし、聖王様と同等の魔力があるってこと? びっくりだよ。聖女の力ってすごいんだね。
司祭様によると、作った万能薬は量がなかったので、二つの実験しかしなかったらしい。
半分を泥水に入れて、もう半分を怪我をした使用人を探してその傷にかけて見たらしい。
泥水に入れた方は、あら不思議、泥水が綺麗に澄んだ水に変化して、使用人の怪我にかけたほうは見る見るうちに傷が塞がったのだとか。
もともとただの水だったものがそんな変化をもたらせば、それは「万能薬」認定されてもおかしくないかもしれないけど、わたしはこの目で見たわけじゃないからまだあまり信じられない。
というか、これは少々面倒くさい流れになった気がしている。
司祭様は壺――もとい聖王シュバルツアの壺を、ベッドに上体を起こしているわたしの膝の上にちゃっかりのせて、次を期待していますと言わんばかりの視線を向けてくる始末だ。
このままだったら、わたし、ひたすら万能薬を生成させられる羽目にならない?
やだやだ、そんなの絶対いやだ。
第一万能薬なんて今までなくてもみんな幸せに生活していたんだからいらないでしょ!
しかしこれはいかんせん断りにくい雰囲気で、わたしは苦渋の策に出た。
「……ば、万能薬を作るのはなかなか魔力を使うので、その……一日一回にしていただきたいです……」
ぶっちゃけ魔力切れなんて起こしていないし、そもそもそれに底があるのかどうかもわからないが、視線を泳がせながらわたしがそう言えば、司祭様はあっさり引き下がった。
聖王シュバルツア様のほど魔力が必要なのだから、「聖王シュバルツアの壺」で万能薬を作るのは、それはそれは負担がかかるのだろうと勝手に解釈してくれたらしい。
ラッキーと言えばラッキーだが、「聖王シュバルツアの壺」はわたしが持っていた方がいいだろうと押し付けられ、なおかつ司祭様がいる間は、一日一回の万能薬の生成を頼まれてしまった。
のちのち、礼金として教会からお金もくれるらしい。
まあ、もとがただの水だから、たいした金額は期待できないだろうけど、ちょっとしたお金儲けだと思えば一日一回の作業くらい苦にはならないだろう。
万能薬と言うくらいだから風邪薬にもなるんだろうし、司祭様が帰ったあとは自分や使用人のみんな用に少し作っておいておいてもいいかもしれない。
――と、暢気なことを考えていたわたしだったけど、のちのち、教会からとんでもない大金が贈られてきたのを見た瞬間、一日一回なんて無駄な制限をつけずに量産して売りまくれば大金持ちになれたんじゃないだろうかと、後悔することになるのだが、それは数か月先のことになる。