恋と2つのブランコ
蘭視点

 
 今夜こそは、絶対に言うんだ。

 「10月10日の16時、あの公園に。」
 
 
 会って、ちゃんと話がしたかった。


 今更何を話そうか。
 話す事なんてないかな。
なんて考えていたけれど、やっぱり話がしたい。


 本当はもう一度、夢と仲直り出来たらって思う。

 

 実を言うと、もっと早くにしたかった。

 10月3日とか、4日とか。

 だけどまだ勇気なんてない。
 だからもう少しだけ、待ってて…



 あの公園… 懐かしいなぁ。



 2021年5月7日

 「ねぇ、夢。」

 「んー?何ー?」

 「あのさ、今日の放課後、空いてる?」

 「うん、空いてるよー!」

 「あそこの公園で話したいことが…あるんだけど…」

 「うん、分かった!」

 「ありがと」

 
 俺達は2つのブランコに腰掛けた。

 「で、話って何ー??」

 「あ、あのさ~、」

 「うん。」

 「そ、空が綺麗だネ~!」

  き、緊張しすぎて上手く言えない…!

 「え、?」

 そりゃそうなるよな。

 「え、あ、うん、。そ、そうだね。」

 突然言われたから多分驚いているんだろう。…誰だって驚くか。

 勇気を振り絞って、言ってみよう…

 「…ホントはさ、」



 「こう言いたかったんだ。」

 「ん?」

 「俺は、夢が好き。友達としてじゃなく、1人の女として。」

 「え、、、」

 「夢は?俺の事、どう思ってる、?」

 「………き」

 よく聞こえなかった。
 き、?嫌いなのかなぁ。

 「え、?」

 「私も好き…」

 思いもよらぬ答えが帰ってきた。

 「ふふっ、そっか」

 安心したせいか、少しホッとして、
口元が緩んでしまった。

 「じゃあ、俺と、付き合って下さい。」

 「はい!私で良ければっ!」

 「よかったぁぁぁぁ!」

 「これから宜しくね!」

 「うん!
 俺が夢の事、一生守ってあげる。」

 「ありがと!」

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   この頃は楽しかったのになぁ。


この日の思い出も全部、ポケットにしまって、繋いだ日々に別れを受けなきゃいけないのかなぁ。


 夢の中でふと思い出す。
 あの日の君との幸せなを。


 だけど、やっぱり俺は、
 「想い出」にしたくないから…
 「明日」もまた君に会いたいから…
 「もう」涙を流させはしないから…


      もう一度、君と…

  って言わなきゃ。


   ピコンッ

 …?誰からだ、と思い開いてみた。







 



  

       夢からだ。


「10月4日の15時に、あの日の公園で。」
 

 何か、急かされたような気がした。
 夢の方が辛いから、俺から言わなきゃ
って思ってたのに…
夢の方が、俺よりよっぽど辛いはずなのに…

 俺は泣いた。
 初めて夢の優しさや、勇気に気付いてあげられた気がした。
                    
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