愛されたいと叫ぶ夜

第五話

五話
■高田家、寝室、ベットの上

真帆が誠司の上に乗りキスをする。もちろん受け答えではくれている誠司。

真帆【キスだって久しぶりだし……誠司もちゃんと、キスしてくれてる……嬉しい……】

〈お腹の奥がキュンってする。
この感じ、いつぶりだろう……〉

唇を離し、誠司の下半身に手を伸ばす真帆。

〈え――〉

真帆【あ……】
全く勃っていない誠司の性器。
触られて焦る誠司。

誠司「ごめん、最近疲れてるからかな? ごめんな真帆」
起き上がって苦笑いで謝る誠司。

真帆無理矢理笑う。

真帆「最近誠司忙しそうだったもんね! 仕方ないよ。うん、また今度にしよっか」
誠司「ああ、そうだな。今日はもう寝よう、おやすみ」
真帆「おやすみ……」

誠司そっぽ向いて寝始める。

〈またそっちを向いて寝るの?〉

真帆【出来なかったんだから、もう少し近くで寝てくれてもいいのに。腕枕しろとは言わない。少しずつの間手を繋いで向かい合って寝ることも疲れてるからダメなの?】
唇をかみしめて泣きそうなのを我慢する真帆

下着姿のままそっとベッドを降りる。

■洗面所

鏡に向かって自分を睨みつける。
真帆【こんな下着っ――】

勢いよく脱いでバンって床に投げつける。


真帆【こんな下着着たって、意味なかったじゃない。馬鹿みたい……】
【私だけがヤル気満々で恥ずかしいっ!】

わぁぁっと泣いて、小さく疼くまりボロボロ泣く。

〈女としての自信をへし折られた気分だ〉

■次の日の朝、リビング
起きたばかりのボサボサの真帆が起きてくる。
ダイニングテーブルにはすでに朝食が一人分用意されていて、表情は変えないが驚く真帆。

〈なにこれ?〉

真帆【昨日の罪滅ぼしってところ? いつも私より遅くに起きて出来てる朝ごはんを食べるだけなのに】

誠司がキッチンからコーヒーを一つ持って出てくる。

誠司「真帆、おはよう。今日じつは早出で、早く起きたから真帆の分の朝食も作ったんだ。パンでよかった?」
コーヒーをテーブルに置いて真帆を見る誠司

真帆「……いらない」
ふきげんそうに小声で言う真帆

誠司「そっか。パンじゃなくて米の気分だったか。ごめんな。じゃあ俺会社行くから、真帆も仕事頑張れ」
無理して笑っている表情の誠司。
バタンとリビングのドアが閉まる。

真帆【……そうじゃないって誠司もわかってるくせに】
朝食を眺める真帆。

■身支度を済ませた真帆が家を出る
寂しそうな顔の真帆が玄関を出てドアが閉まる。

ラップされて一口も食べていない朝食がキッチンに取り残されている。

■高田家、キッチン。唐揚げの材料が並んでいる。

真帆「一日中悩んじゃったけど。やっぱり朝の態度はひどかったよね。せっかく作ってくれた朝ごはんもいらないなんて言って……」

〈謝ろう〉
きゅっと真帆が長い髪をポニーテールに縛りながら

〈朝の態度をちゃんと謝って、自分の気持をしっかり伝えるんだ〉
お肉をもみもみしながら

〈貴方に愛されたい〉
ジューッと揚げる

■料理完成、ダイニングテーブル

ずらっと並ぶ料理に並べてスマホもテーブルに置いてある真帆
時刻は二十時

真帆【もしかして、残業かな?】
スマホを手に取った瞬間誠司から「残業になった」と連絡が入る

真帆【そっか、残業かぁ。でもそんなに遅くになったことないし、食べないで待ってよう】

チクタクチクタク。どんどん時間は経って、壁掛け時計の針は二十三時過ぎている。
真帆の腹がぐぅ〜と鳴る。

真帆【もう食べちゃおう】
大口で唐揚げを食べようとした時、ガチャッと玄関が開く。

真帆「帰ってきた!」
箸を置いて嬉しそうに玄関に迎えに行く真帆

真帆「誠司お帰り! 残業お疲れ様」
やっと会えたって感じの満面の笑みの真帆
誠司は夏なのでワイシャツ、ネクタイ姿。

誠司は真帆の姿に驚く
誠司「真帆っ、どうしたの!?」

真帆「どうしたって、朝の態度悪かったから謝りたくて誠司のこと待ってた。朝はごめんね、せっかく作ってくれたのに」
しょぼんと謝る真帆

誠司が優しく微笑んで真帆の頭をぽんっと撫でる。
誠司「そんなの気にしてないよ。でも、待っててくれてありがとう。汗書かいたからシャワー浴びてくるね」

真帆「うん」
頭を撫でられて嬉しそうな真帆

誠司が頭から手を離して真帆から離れ、背中が見えた瞬間、ワイシャツの首元近くにグロスがついていることに気がつく真帆

真帆【え……? グロス?】
【なんであんなところに……見間違いかな?】
不思議そうな、不安そうな真帆の表情


■洗面所
誠司がシャワーを浴びようとワイシャツを脱いだ時、グロスに気がつき、焦る。

誠司【は!? こんな所、いつの間に……真帆に見られたよ、な?】
はぁぁと顔が青ざめ、額手を当ててため息をつく誠司。
誠司【もしかして帰り際に抱きついてきた時か?】

回想、ラブホ内の帰り際
美玲が誠司にぎゅっと抱きつく
美玲「あ〜あ、もうバイバイとか寂しいなぁ」
きゅるんとした顔で誠司を見る美玲

誠司「洗うか……」
洗剤を出そうとした瞬間、トントンと洗面所のドアが鳴る。
ハッと驚く誠司

真帆「誠司、入るよ」
誠司【ま、真帆!?】

ガチャッと入ってきた真帆はばっちりワイシャツを見て、視線をワイシャツから動かさない。真顔で。

真帆「やっぱり。さっきチラッと見えたから気になって」
凄い硬い怒っているような顔の真帆
誠司は慌ててることをバレないように冷静を装う。

誠司「あ、これ? 俺も今気づいたんだよ。多分今日女の人と電車でぶつかっちゃって、そのときについたのかも。満員電車だったからさ」
苦笑い誠司

真帆「なーんだ! そうなんだ。やっぱりそんなことかなぁとは思ったんだよね。この色……今若い子に人気の色よね。この前私もお客様にオススメしたものの色と似てるわ。やっぱり流行ってるんだね」

誠司「そ、そうなんだ。自分で洗っておくからさ」
真帆「こすりすぎないように気をつけてね」
誠司「あぁ、分かった」

真帆は洗面所を出て、誠司がほっとする。

誠司【ば、バレてない、よな……?】


■洗面所の外側ドア、薄暗い廊下

真帆【あんな所に普通つく? 首近くに……まさか浮気、だなんてそんなこと誠司に限って有り得ないよね】
不安そうな真帆

〈――浮気されたら私、どうなっちゃうのかな〉


■次の日のランチ時間、外を一人で歩く真帆

真帆【昨日は結局色々考えすぎてなかなか寝付けなかったわ。】
【浮気されたらどうしようだなんてたらればばっかり考えちゃって】
【誠司ってどうやって性欲処理してるのかしら……昔は週二回くらいはしてたのに、って考えすぎ!】
頭をブンブン振る真帆

真帆「あ……」
まだ入ったことのないイタリアンレストランが目に入る
最近できたばっかりの見た目からオシャレなお店、Consolare(コンソラーレ)

真帆【今日は一人ランチだし、ちょっと高そうだけど入ってみようかな】

カランカランと綺麗な音が鳴るドアに「わぁ」と感動する真帆

爽汰「いらっしゃいませ」
めっちゃイケメン爽やかスマイルで登場する爽汰

真帆「へ!?」
爽汰の登場に驚く真帆

真帆【な、なんであの時(合コン)の男の子が!?】
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