クールな御曹司は湧き立つ情欲のままに契約妻を切愛する
足しげく農家にも通い、一緒に栽培をしたり、茶葉のアドバイスをしたりしながら、店に戻っても茶葉選定作業に没頭していて、経営とは無縁の生活をしている。

今は店舗で茶器の販売や、多くはない製造したお茶、そして父がブレンドしたお茶を細々と販売している状態だ。
父のお茶はとても品質も味もいいのだが、時間もかかるうえに一人でやっているため全く採算は出ない。
しかし、父のキラキラした瞳を見ていると、私も母も何も言えないのが現状だ。

「ただいま……って今日も来たの?」
私は和室のテーブルに座る父にため息交じりに問いかける。
父の代わりに声を発したのは母だった。

「瑠璃。とりあえず手を洗っていらっしゃい」
「あっ、うん」
一気に現実に戻されたような気分で、軋む床を歩きながら洗面所へと向かう。水回りはリフォームしてあるが、廊下や階段など昔ながらの我が家は歩くたびに音がする。
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