クールな御曹司は湧き立つ情欲のままに契約妻を切愛する
「あの、お客様、まだ開店前ですので……」

瑞樹くんが見かねて声をかけてくれるも、彼女はキっと彼を睨みつけて黙らせてしまった。

「あなた、凛久をこれ以上窮地に追い込んで楽しいのかしら?」
いきなり言われたその言葉に、私は目を見開く。彼女が当たり前のように凛久と呼んだことも、窮地に追い込むといったことも理解できない。

「あなたと離婚しないと言ったばかりか、実家まで援助なんかして、かなり藤堂で立場が悪いことをご存じ?」

「え……」
まさかそんなことがあるとは思っていなかった。確かにお義父様からは反対されてはいるが、凛久が藤堂に戻ることを望んでいたと聞いている。
しかし、確かに私の実家というお荷物がついてきたのは事実だ。

凛久は順調だと言ってくれたが、もしかしてそれは偽りでかなり藤堂の中で無理をしてくれたのかもしれない。

どんどん血の気が引くような気がして、私は立ち尽くす。
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