クールな御曹司は湧き立つ情欲のままに契約妻を切愛する
「工場だけ? それともこの店も? そもそも、そんなに借金……あるの?」

私が恐る恐る尋ねれば、父は観念したように口を開く。

「ここ何年もずっと赤字だったから、銀行の融資のしてもらえなくて仕方なく」
いったいどこから借りて、いくらほどあるのか。銀行の融資ではなく、借金取りと聞けば健全なところではないかもしれない。

「どうしてそんな……」
そう呟いていたが、尋ねなくてもわかりそうなものだ。父は父なりに店や従業員を守ろうとしたのだろう。

最近、お茶離れが加速していたが、変わらず工場は稼働していたし、きちんと給与も支払っていたはずだ。
だからこそ、借金が膨らんだ……。

そこへ昔ながらの呼び鈴が音を立てて、私たちは言葉を止めた。
無言で私は立ち上がると土間へと向かう。宅急便か何かだろうと、スリッパを履いてガラガラと引き戸を開ける。

「はい」
< 16 / 176 >

この作品をシェア

pagetop