クールな御曹司は湧き立つ情欲のままに契約妻を切愛する
父は座ったまま胸の前で腕を組んだまま、私を見据える。

「いいわよ」
母の言葉に、障子を開ければ彼は小さな庭を見ていた。

「お待たせいたしました」
緊張して言葉が上ずってしまう。今までのように気さくに話をすることなどできない。

「いきなりのご訪問申し訳ありません」
そういうと、彼は綺麗な所作で正座をすると、父に頭を下げた。
まるで結婚の申し込みに来た人のようだ。私も部屋の隅に正座をしながら、そんなバカな考えを持ってしまい慌ててその思考を頭から追い出す。

「ご用件は?」
これでも父は経営者であり、頑固な人間だ。
いきなり現れたその人に警戒心をあらわにして、差し出された名刺を一瞥した。

「単刀直入に申し上げます。お嬢さんを私にいただけないでしょうか」
「は??」
つい可愛げもない言葉が私の口から洩れる。両親も同じようで目を見開いていた。

「どういう意味だ?」
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