クールな御曹司は湧き立つ情欲のままに契約妻を切愛する
父が完全に彼を睨みつけると、その視線を受け止めながら真っ直ぐに二人は視線を交わらせる。

「言葉通りです。結婚をしたいと思っています」
何をいっているのだろう。今初めて彼の身分を知ったが、つい数分前まで名前もしらない人だった。

そんな人がなぜ私にプロポーズしているのか理解できない。
まったくどんな感情か私にはわからないが、父はその場で押し黙っている。

「それと、我社の商品のお茶の監修をお願いしたいです」
そこでハッとする。あの日の、たわいもない彼との会話を思い出す。

まさかそれが目当て? 確かに今は経営が危ないが、お茶の世界で父の名は知れているだろうし腕は確かだ。

もし、その仕事を受けられれば、お茶をあのカフェに下ろすことができれば、この家も店も手放さなくて済む?

そんな浅はかで愚かな考えが私の脳裏に浮かんでは消えていく。
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