クールな御曹司は湧き立つ情欲のままに契約妻を切愛する
「瑠璃、送ってくれる?」
「あっ、はい」
サラリと名前を呼ばれ、私はドキッとして流されるように返事をしていた。
母も玄関まで見送りに来て、頭を下げている。会社の社長で家業も助けてもらえるなど、我が家にとっては救世主のようなものだ。
「じゃあ、送ってくるから」
両親に伝え、静かに頭を下げ出ていく彼の後ろを追いかけた。
「あの!」
家から少し離れた路地で私はたまらず声を上げた。
一メートルほど前を歩いていた彼は、ゆっくりと振り返った。
「あの、どうして、こんな」
単語を並べた私の元へゆっくりと彼が歩いてくるのを、スローモーションのように感じる。
すぐ目の前に来た二十センチは身長が高い彼を見上げた。
「そのままだよ。俺と結婚しないか。君の実家も助けることができる」
それはさっき聞いた話だ。でも、どうしていきなり私なのか全くわからない。