クールな御曹司は湧き立つ情欲のままに契約妻を切愛する



彼女と別れ俺は大きく息をついた。第一段階はクリアと言ってもいいだろう。

父に言われ真っ先に頭に浮かんだ自分にも驚いた。身分を隠し視察をする中で、楽しみのひとつになっていた彼女に会うこと。
優しい笑顔も、話す声も、テンポもすべてが心地よかった。

毎日の緊張と敵だらけの中で、唯一と言っていいほどの癒しの時間。こんな気持ちになることがあるなんて初めて知った。

”手に入れたい”女性に対してこんな気持ちは初めてで、自分のやったことに、一番驚いているのは俺だ。

すぐに俺は彼女の身辺を調べさせると、彼女の実家が老舗の茶問屋の翠光園だと知った。
昔はよく名前を聞いていたが、最近はあまり名前を聞かなくなったことに疑問を持っていたが、彼女がアルバイトに出ていることで、経営状況が悪いのではないかとすぐに感じた。

これを利用するのは卑怯だと思う気持ちもあったが、俺には時間がない。
瑠璃が俺をただの常連だと思っているだけなのも知っている。そんな彼女の実家の弱みに、俺が一番嫌いだった権力までを使って結婚を押し切った。

『三か月で離婚をすればいい』
彼女を警戒させないためにもそう伝えたが、絶対に離婚するつもりもないし、手放すつもりもない。

甘やかして、俺に落ちてくるようにして見せる。
彼女が手に入るなら、俺はどんなことでもする気がした。

そう思いながら、車のフロンドガラスから見えるオレンジ色の月を見上げた。

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