クールな御曹司は湧き立つ情欲のままに契約妻を切愛する
「いや、瑠璃は気にすることはない」

もう一度みずようかんを食べながら、凛久さんは笑顔でそう答える。
実家のことを助けてもらっている内容を知らないわけなど、許されるわけない。

「お願いします。すべて教えてください」
懇願するように彼に頭を下げれば、凛久さんは観念したように口を開く。

「安心していい。すべての負債は終わったから、工場も家も安心して住んでもらえる」
両親が安心して住めるかを気にしていたわけではない。いくら社長とは言え決して少なくはないお金を動かしてもらっているのだ。
キュッと唇を噛んで私は申し訳なさから「申し訳ありません」と頭を下げた。

「瑠璃がそうなると思ったから言わなかった。でも、言っても言わなくても気にするってことだよな」

自分に言い聞かすように最後は言う凛久さんを私は見あげた。
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