クールな御曹司は湧き立つ情欲のままに契約妻を切愛する
キュッと唇を噛みしめながら、小声で言えば「ごめん、ごめん」という声が降ってきた。

「とりあえずどこかに行こうか」

「はい」
目の前に自ら手をつなぐことを了承してよと言わんばかりに、手を私に向ける。
それを少しだけ躊躇しつつも、そっと手を重ねた。
そうすれば、凛久さんはキュッと私の手を握りしめた。本物の恋人のデートのようでキュッと胸が締め付けられる。

この甘い胸の疼きに気づきたくない。これ以上彼を好きになりたくない。
そう思っているのに、こんな凛久さんは反則だ。
そんなことを思いながら歩き始めた。

「どこに行きたい? 今日は瑠璃の好きなところに行こうと決めてる」
私がデートで行きたかった場所はどこだろう? そう思うも特に思いつかない。
昔は確かにあこがれがあったが、いつしかあまり考えなくなった。

「凛久さんは?」
「俺?」
尋ね返せば凛久さんも考えるような表情を浮かべる。
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