クールな御曹司は湧き立つ情欲のままに契約妻を切愛する

立ち上がって頭を下げれば彼は微笑んだ。

名前は知らないが、週に数度来店する常連さん。芸能人のような人だなと一番初めに思ったのをよく覚えている。少し冷たく見える彼だったが、意外にもお茶が好きなようで、いろいろカスタムをするので、すっかりお茶好きの私はなじんでしまった。

「今日のおすすめは水出しの緑茶か」

「はい、すっきりとした京都のお茶です。私の実家でも扱っているのでたまに自分でも入れますがおいしいですよ」

いつもはカウンター越しに話をするため、実家の話などはしたことはないが、黒板を書いていたこともあり、さらりと実家の話をだしてしまったことを反省をする。

「すみません、私の話なんて」
慌てて謝罪をすれば、彼は「全然いいよ」そう言うと話を続けた。

「実家も飲食店なの？」
当たり前の問いかけに私は小さく首を振った。

「いいえ、昔ながらのお茶屋なんです。緑茶とか抹茶とかを扱っています」