クールな御曹司は湧き立つ情欲のままに契約妻を切愛する
そういうと、凛久さんは立ち上がった。

「え、あの」
最悪な挨拶に、私は何を伝えたらいいかわからない。
少し強引に手を引かれ、私はお父様と凛久さんを交互に見る。

「君も、身の程を知ることだな。次は事業の失敗と離婚の報告か?」
暗に私じゃ役不足だと言われたのが分かり、何も言えなくなる。
そんな時、凛久さんは立ち止まり振り向いてお父様を睨みつける。

「瑠璃を侮辱することは許さない」
それだけを言うと、凛久さんは私の手を引きその場を後にしてしまった。

「凛久さん」
歓迎されるとは思っていなかったが、まさかこんなに反対されていることに、私は自分の考えの甘さを痛感する。

この数週間の幸せな生活は、現実逃避のおままごとだったのかもしれない。
仕事で成功しなければあのお父様に認められないのに、私の実家の借金にまでお金を使わせてしまった。
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