隠れSだって、優しくしたい!!(……らしい)
一週間考えすぎて、頭がおかしくなりそう。
胃はきゅっと悲鳴を上げてるし、あれこれするパワーがない。
な・の・に。
「やーっと週末。長すぎ。我慢疲れ、半端ないんだけど」
「……元気じゃない」
あれから、さすがに一緒に退社するわけにもいかず、結果、戸田くんが私を待つと言い張って曲げなかった。
「碧子さんといれると思えば、ぐったりしてるわけにいかないでしょう。でもね、まじで結構しんどかったんだよ? 誰かさんが、可愛いことして俺を誘惑してばっかだから」
「か、可愛……なんてしてない……! 」
「してるよ。ってか、引っかかるのそこ? 誘惑してる、は気にならないんだ。……僕を弄んで、意地悪な先輩」
わざとっぽく眉を寄せ、目を潤ませて。
顎を持ち上げられた時は、そっちが意地悪な顔してたくせに。
上から注がれる視線は、とても受け止められないほど甘く優しい。
「……意地悪、卑怯、って顔。でも、それはお互い様だよ。俺だって、碧子さんに翻弄されてる」
もう、日も暮れてる。
なのに、頬がサッと色づいたのがバレた?
顎から頬に指を移動させると、体温が上がったのを確認して満足そうで。
「……本当に辛かったんだよ。碧子さんが、無意識に息を吐くのとか。手とか……髪、掻き分けるのとか。横で見てんの拷問なのに……でも、見ちゃう。見ちゃったら、いろいろ思い出して、もうそれしか考えられなくなる。……碧子さんの、最高にエロいとこ」
「な……べ、別に何も変なことしてな……」
言ってることは軽いし、やっぱり若い男の子って感じだけど。
「分かってるって。好きだから、視界に入った部分、全部意識を下に持ってっちゃうんだよ。仕方ないじゃん、こればっかりは」
「……………そ、そんなこと言われても、“そうなんだ”としか言えないんですけど」
歩こう。
道端でする会話じゃないし、それに。
「……でも、好きすぎるから。碧子さんのことが好きすぎて……やっぱ、脳に戻ってくる。まあ、戻ったからって性欲収まるわけじゃないけど。……でも、胸、すごい苦しかった」
――その目が妖しいのを知らないふりするには、まだ明るすぎる。
「あ……っ、ちょっ……」
よろめいたのも後から気がつくほど、突然腰を寄せられて傾いた瞬間、抱き留められる。
「……なのにさ。もうひとつのお願い、いつ聞いてくれんの? 一週間、待ちくたびれちゃった。覚悟してね、碧子さん」
この時間、人通りが少ないわけじゃない。
ラッシュとは歩道では言わないかもしれないけど、まだまだこれから帰宅する人だって増えてく時間帯。
そんな時、こんな場所で、転びそうになったのを支えてくれた戸田くんは、もしかしてそこの女の子の目には、ジェントルに映ってたりする?
だとしても、実際は。
「お預けされすぎて、どっか壊れてるかも。……理性、とかさ」
――紳士さ皆無どころか、獣めいた顔してる。