隠れSだって、優しくしたい!!(……らしい)
・・・
いつの間にか、ソファでうたた寝をしてた。
ううん、「ソファで」じゃない。
(……重かったよね)
一穂くんの胸で、膝で。
私にとってはこれ以上ないくらいの絶妙なホールドで、安心して眠ってた。
せっかく作ってくれてたのに、夕食の間不自然だったよね。
偉い偉いどころか、私がいいこいいこされてしまった。
(……年上? )
笑ってしまう。
そんな大人の女になんか、彼の前ではもう二度となれない気がする。でも、ね。
「……頑張ったね」
今までのことも。
今日のことも。
それがどうして、私が支えになれたのか分からないけど。
「ありがとう」
これからは、そうなれるような私でいたい。
『偉い偉い、して? 』
ご希望どおりか確かめるのが怖くて、寝込みを襲うしかできないけど。
右手で、ふわふわのくせっ毛を撫でて。
彼の頬を捉えた左手の人差し指が震え、どうにか薬指が引っ掛かる。
(偉い偉い……)
――すき。
唇から伝わる頬の感触が、やけに生々しい。
ちっとも偉い偉いになりきれなかったことに羞恥を煽られ、頬へのキスすら可愛くできなかった自分がものすごく邪すぎて。
(……なに考えてんるだろ……)
「……ごめ……」
郵便局で彼女と遭遇した時は強気でいられたし、演技というより本心だと思ってた。
おばさんなんて言われた時も、彼女からすればいろんな意味でそれもそうだなって思ったくらいで、一穂くんにとってそうじゃなければ、それでいいと強く思えた。
大人でも、強い女でもない。
そうなれる面も、ないとは思わない。
なのに、寝ている一穂くんですら、こうして抱っこされてしまえば。
偉い偉いも上手くできない、ただの甘えたがりだ。
「……待ってよ」
ソファから下りた瞬間、手首を取られた。
「一体、何なの……」
「……ごめん……」
起きてた。
やっぱり、これは彼の欲しがってたものとは違ったんだ。
子供扱いはやめようと思ったのに、してないつもりだったのに。
「よく頑張りました」なんて――……。
「俺をこんな照れさせといて。一人で放置するつもり? 」
「……え……」
顔を上げると、反対の手で顔を覆ってる一穂くんがいた。
「褒めてくれたんだと思った。違った? 」
違わない。
首を振る私に、それじゃ納得しないって少し引っ張って。
「来て」
強く引かないで、自分の足で抱っこに戻らせるのは意地悪だけど。
「嬉しかったよ。ほっぺにキスなんて、前の関係じゃあり得なかったから」
「……照れたの? 」
頬、熱い。
その熱を何度も確認する私に笑って、往復する指を捕まえた。
「好きな子に、こんな可愛いことされたらね。なのに、置き去りにするってどういうこと」
嘘って分かる怒った顔が、もうどうしようもないくらい愛しい。
「……嬉しい。ねえ、俺、嬉しいんだよ」
――碧子さんからね。
「幻想? 夢だったかな。……そうじゃないって言って、お願い」
――愛してるって言われたと思った。