愛たい夜に抱きしめて
つんつん、と突いていた指が、何かどろりとしたものに触れた。
突いていた人差し指を見てみれば、何か赤いものがべっとりと付着している。
……鉄が錆びたような、鼻につく匂い。
これは、血かな。
……あ、いや、血のりって線も、
「……この状況ではないか」
血を見た瞬間、急速に頭が冷えた。
頭が割とぱっぱらぱーなのは変わらないけど、でも、この状況で、この場合何をすべきかなんてものは、決まっている。
「あの、口動かせたらでいいんですけど、救急車呼びますか?それとも警察?……あれ、救急番号ってイチイチキューだよね、ん?ナナだっけ」
「ナナは時報……」
「あ、生きてた」
やはりこの時のわたし、死にかけの人に訂正されなければ、あやうく117を押そうとしていたぐらいには頭が働いていなかった。