愛たい夜に抱きしめて
「……えっと、あの、まさかとは思うんだけど、学校とかって、」
「はい。僕たちと同じ花南高等学校の一年生です」
「……あれ、でも、一年生のクラスに二人同じ名字の檪くんはいなかったような、」
「いないわけではないんです」
向かい側に腰掛けて、肩をすくめる紫昏くん。
「ただ……、ただ少し、生活時間が逆転していて……、ちゃ、ちゃんと前期は出ていたんですけどね……」
また頭が痛い、いや、もはや頭痛が痛そうに頭を抱え込む紫昏くん。
……な、なかなかに苦労しておいでで……。
「もうすぐ春休みですね。……来年は、一緒のクラスになれるでしょうか」
「どう、かな。あの高校、そこそこ人多いから、1/6の確率だし」
そんな風に、ふたりで喋って時間を潰して。
そうしていたら、ドテッ、と寝返りを打った氷昏くんがソファから転げ落ちて。
その時ばっかりは、紫昏くんと顔を合わせてくすくす笑ってしまった。
「それじゃあ、乃坂さん。よければ明日もまた来てください。存分に腕をふるいますので」
「……うん。気が向いたら」
─────その生活の中にふくまれた違和感を、
すべてドアの中に押し込むように、
閉じられる扉に背を向けた。