愛たい夜に抱きしめて
꙳☄︎
・
──────ということが2日前に起こったことだと気づいたのは、いまさっき。
目の前には、ニコニコ笑顔で座る芸能人さながらの美少年。
学校が終わった放課後に、近場のカフェへと拉致されたわたし。
そして、2日前に起こったことを覚えていますか?と唐突にもこの美少年に聞かれたのだ。
「……確かに、いま思い出しました。わたしが2日前、不良をタクシーに放り込んだこと」
「思い出していただけてなによりです」
「あの……ところで、」
おずおずと。
本当に今更だけど。
「えっと……どちら様ですか?」
夜に紛れる漆黒の髪を靡かせて、前髪に隠れる鋭利な瞳を緩ませながら、同じ制服を着た彼は微笑んだ。
「失礼しました。僕は、先日あなたに助けていただいた男、氷昏の弟の檪紫昏です。その節は、兄が大変お世話になりました」
そう言ってふわりと髪を揺らした彼は、これからよろしくお願いしますね、となんとも不吉なことを呟いた。